2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13930
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 一也 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30300718)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スピンノイズ / ガリウムヒ素 / 励起一重項分裂 / ルブレン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実績は以下の通り ①スピンノイズ分光法測定光学系の構築:すでにいくつかの報告があるガリウムヒ素ウエハーに対するスピンノイズ分光を対象に光学系の構築を目指した。ヘリウムクライオスタットを用いた低温真空セルを構築し,試料を30ケルビンまで冷却可能にし,その中に電磁石を設置して,~100ミリテスラ程度の可変磁場を印加できるようにした.Siドープガリウムヒ素基板を試料として,半導体レーザー(830 nm)をプローブ光としたスピンノイズ検出系の構築を試みた.試料透過光の偏光面の揺らぎを,偏光ビームスプリッターとバランス光検出器の組み合わせで検出し,ノイズスペクトルを市販のスペクトルアナライザで検出することを試みた. ②有機半導体の一重項分裂過程の集合構造依存性の研究:スピンノイズ分光の適用対象として考えている,有機固体中の励起一重項分裂過程について,ルブレン非晶質膜を対象に,その超高速ダイナミクスを測定した.真空蒸着により作成したルブレン非晶質膜に近紫外・可視のフェムト秒レーザーパルスを照射し,電子励起状態ダイナミクスを過渡吸収により追跡した.数 ps程度の時間で励起三重項状態が生成するのが確認され,励起一重項分裂が起きていると考えられる.さらに,その転換速度が時間とともに減少し,10 ps程度で転換が停止する特異な現象が観測された. ③光共振器閉じ込め効果による光吸収変調:ファラデー回転によりスピンノイズの検出効率を飛躍的に向上させるためには,共振器を用いた光閉じ込めが有用な手段の一つとして考えられる.そのため,真空蒸着により金属薄膜共振器を作成し,その間に挟まれた有機分子膜の光吸収特性の変調を試みた.ルブレン薄膜を対象とし,その電子遷移にキャビティーモードを共鳴させることで,吸収帯の分裂が起きることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピンノイズ計測に必要な光学系の構築は達成された.現在,スピンノイズ信号の観測を試みて,信号積算,最適測定条件の探索を行っているところである.信号強度を増大させるために,プローブレーザーの集光条件を最適化する必要があり,レーザー集光光学系の真空セル中への導入等の工夫を行う必要があり,装置開発に時間がかかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築した光学系を用いて,まずガリウムヒ素基板におけるスピンノイズ分光測定の確立を行う.続いて,MoOなどの金属酸化物で,光触媒活性を有することで着目されている系を対象に,金属原子の酸化状態をスピンノイズ分光でプローブすることを目指す.検出には光の波長を最適化することが非常に重要であるため,現有の波長可変ピコ秒レーザーを用いて,スピンノイズ計測が可能であることを確認し,目的の物質に応じた最適プローブ条件を探索する. また,信号強度増大のために,金属薄膜蒸着による光共振器を構築し,そのキャビティー閉じ込め効果による信号増大の可能性を探る.すでに本年度,予備実験として,銀薄膜に挟まれた有機薄膜の光吸収変調の観測を行っており,この成果をさらに進める.
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Research Products
(2 results)