2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13940
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
長澤 裕 立命館大学, 生命科学部, 教授 (50294161)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超高速分光 / 顕微分光 / 時間分解分光 / 縮退四光波混合 / フェムト秒 / 核波束運動 / レーザー分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
測定系はまだ未完成なので、溶液系でフェムト秒過渡吸収スペクトルを測定し、予備的な実験を行っている。本研究では光合成の光化学系II反応中心(PSII)の顕微分光を予定しているが、まずは溶液系で測定を行い、論文発表した(Y. Yoneda, et al., J. Am. Chem. Soc., 138, (2016) 11599)。ここでは、PSIIのモノマーおよびダイマーの光エネルギー移動過程と電荷分離過程の比較を行った。励起光強度を上げていくと、蛋白質複合体中の複数のクロロフィルが励起されることにより、励起子-励起子対消滅が起こるようになるが、ダイマーにおいても高効率に対消滅が起こることが観測され、ダイマー中のモノマー間でも高効率でエネルギー移動が起こることが確認された。さらに奇妙なことに、二項定理に基づくモデル計算では、ダイマーの場合も一つしかラジカル対ができないことが示唆された。ダイマーでは反応中心が二つあるため、ラジカル対が二つ生成することも可能だが、一つしか生成しないということは、なんらかの過剰光防御機構があることを示唆している。今後はPSIIの微結晶について顕微分光による励起状態ダイナミクスの観測を行う予定である。ビアントリル誘導体についてもフェムト秒過渡吸収測定を行い、溶媒和に依存しない超高速の電荷分離反応を観測した(E. Takeuchi, J. Phys. Chem. C, 120, (2016) 14502)。その際、電荷分離にともなう核波束運動の観測にも成功している。電荷分離の反応速度が溶媒和に依存しないということは、結晶等固体中でも電荷分離が起こる可能性を示唆しており、顕微分光のサンプルとして期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
倒立型リサーチ顕微鏡を除振台上に設置し、フェムト秒パルスレーザー導入の準備を行った。予算が限定されていたため、別の競争的基金により、対物レンズ、ビームスプリッター、三眼鏡頭、デジタルカメラを購入し、顕微鏡系に設置した。縮退四光波混合の計測システムについては、既存の光学系をそのまま流用するが、一部のレンズ、ミラーや光学ステージ等を更新した。とくに、ガラススケールを内蔵した小型X軸ステージ2台を新規に光学遅延ライン用に設置した。これにより、縮退四光波混合系と顕微鏡を組み合わせる準備はほぼ整った。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、顕微鏡に導入するための四光波混合光学系を完成させる。その際、再生増幅器付きTi:Sapphireレーザー励起の非同軸型パラメトリック増幅器(NOPA)2台をフェムト秒パルス光源として使用する。この光源は、二つの波長で同時に30フェムト秒以下の超短パルスを発生可能であるが、既存の測定系は単波長の縮退四光波混合信号しか測定できない。これを改良し、二波長四光波混合測定ができるように改良する。四光波混合においては、2つのポンプ光をサンプル内で交差させることによって干渉縞を生じさせ、分子を励起し、3番目のプローブ光をこの干渉縞で回折させて、その回折光の時間変化を観測する分光法である。本研究室既存の測定系では、これらのポンプ光とプローブ光は、同じ波長のパルスを使用するので、「縮退」した四光波混合となる。そこで、2台のNOPAから違う波長のフェムト秒パルスを発生させ、観測する回折光の波長を可変にすることによって、観測領域を広げる。その上で、これらのフェムト秒パルスを顕微鏡内に導入し、顕微分光系を構築する。顕微鏡内では、対物レンズ等の分散媒体によりパルス幅が伸長すると考えられるので、事前にパルス圧縮用のプリズム対を光学系に導入する必要もある。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] 変形菌ジクホコリの構造色2016
Author(s)
長澤 裕、倉敷 真衣、海老原 稜、吉岡 伸也
Organizer
2016年第17回構造色シンポジウム
Place of Presentation
東京理科大学 野田キャンパス(千葉県野田市)
Year and Date
2016-12-17
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