2016 Fiscal Year Research-status Report
ニトロ化合物とアミンからの新規アミド結合生成法の開発
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16K13942
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 雄二郎 東北大学, 理学研究科, 教授 (00198863)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機化学 / アミド結合 / 有機合成 / 酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミド結合は、タンパク質、ペプチドを構成する重要な結合であり、アミド結合を有する多くの医薬品、生物活性化合物が知られている。特に環状ペプチドはその強力な生理活性から、医薬品候リード化合物として大きな期待が寄せられている。これまでに優れたアミド結合生成反応が種々開発されてきたが、通常のカルボン酸とアミンからの脱水縮合反応によるアミド合成は多くの問題があり、現在でも優れたアミド結合生成反応の開発が求められている。従来法とは反応機構が異なる新規アミド結合生成法を開発する事が出来れば、これまで立体障害のため合成が困難であったアミド結合が、また従来法ではラセミ化しやすく困難であったアミド結合が合成できる可能性がある。 今回、ニトロ化合物とアミンからの酸素による酸化を含む全く新しい形式による新規アミド合成法を目指し検討を行った。検討の結果、ニトロ化合物にヨウ素、アミン、塩基としてK2CO3を加え、酸素雰囲気下反応を行うと、対応するアミド結合が良好な収率で得られる事を明らかにした。 本反応のメカニズムを検討したところ、ニトロナートとI2が反応し、α―ニトロヨードアルカンが生じ、そのアニオンが酸素に1電子移動を起こして、反応が進行するというメカニズムである事を提唱した。 さらに本反応をα―置換マロニトリルに拡張し、α―置換マロニトリルとアミン、塩基、酸素から対応するアミド結合が生成する事も明らかにした。本反応ではマロニトリルのα―位に立体障害の大きな置換基を有する基質でも反応はすみやかに進行し、脱水縮合反応では合成の難しい立体障害の大きなアミド結合に適用可能である事を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた反応を実現しただけでなく、反応機構に関しても検討を行う事ができた。計画通り研究が進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
ニトロ化合物とアミンからアミド結合の生成反応を他の反応基質に拡張する。本反応はニトロナート化合物から酸素への一電子移動を駆動力として進行していると推察している。従来の金属酸化剤を用いる酸化的変換反応に比べ、酸素を用いる反応は、クリーンな反応として現在注目を集めている。この観点から研究を推進する。すなわち、ニトロ化合物以外にも本反応を適用する事が出来る可能性を秘めている。例えばβ―ケトエステル誘導体、ジシアノ化合物あるいはマロン酸のアニオン等から酸素への一電子移動が進行すれば、これまで金属酸化物を用いていた酸化反応を新たな環境調和型酸化反応への発展させることができる。HOMOレベルの高い求核剤と酸素との反応のスクリーニングを行い、本形式の反応の更なる拡張を図る。反応がうまく進行しない場合は酸素に加え、触媒量の金属触媒を添加する事により、環境調和型酸化反応を実現する。
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Causes of Carryover |
予想以上に順調に計画が進行したため、必要と考えていた条件検討のための実験が少なくてすんだ。これにより、想定していた消耗品費用が予定を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験が予定よりも早く進行しており、平成29年度に計画している実験を、昨年度の計画時点よりも充実させる事を考えており、繰越した使用額を増大する消耗品費用に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)