2016 Fiscal Year Research-status Report
フッ素置換遷移金属カルベン錯体を経由する含フッ素化合物の触媒的合成法
Project/Area Number |
16K13943
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
市川 淳士 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70184611)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フッ素 / 触媒 / カルベン錯体 / シクロペンタノイド / 銅 / 付加環化 / 位置異性体 / ニッケル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、中心金属として銅(I)を有するジフルオロメチレン錯体の調製と利用について検討を行った。その結果、フェナントロリン配位子を有する臭化銅(I)触媒存在下、α,β-不飽和ケトンから調製されるシリルジエノールエーテルに対してブロモジフルオロ酢酸ナトリウム(CF2源)を作用させると、[4+1]付加環化反応が進行することを見出した。反応系内で生成するブロモジフルオロ酢酸銅(I)から、脱炭酸と臭化物イオンの脱離により銅(I)ジフルオロメチレン錯体が発生し、これがジエノールシリルエーテルと反応してジフルオロアムチル銅(I)となり、共役付加型の閉環が起こると考えている。これにより、β,β-ジフルオロシクロペンタノンのシリルエノールエーテルを高収率で選択性良く合成することができる。ここで鍵中間体である銅(I)ジフルオロメチレン錯体の生成は、第一級アミンによる捕捉でイソシアニド錯体に変換した後、これを質量分析計で観測することにより確認した。 既に、ニッケル(II)触媒存在下でシリルジエノールエーテルに対して2,2-ジフルオロ-2-フルオロスルホニル酢酸トリメチルシリル(CF2源)を作用させると、α,α-ジフルオロシクロペンタノンのシリルエノールエーテルが得られることを報告している。すなわち本年度の研究成果と合わせると、ニッケル(II)あるいは銅(I)の触媒系を選択することにより、フッ素の置換位置が異なる2種類の異性体を同一出発物質から作り分けられることとなり、有機合成化学上の意義は極めて大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、銅(I)ジフルオロメチレン錯体を触媒種とするフッ素置5員環シリルエノールエーテルの合成法(ジフルオロカルベンとシリルジエノールエーテルの[4+1]付加環化反応)を確立した。ジフルオロメチレンが一炭素供与体として作用する[4+1]付加環化はこれまで例がなく学術的に重要である上、既に開発済みのニッケル(II)ジフルオロメチレン錯体を触媒種とした位置選択的なドミノ ジフルオロシクロプロパン化/ビニルシクロプロパン転位による5員環形成と併せることで、ジフルオロシクロペンタノン誘導体の位置選択的作り分けに成功したこととなる。このように、本研究課題は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
フッ素の置換していないメチレン錯体については、ほぼ全ての遷移金属種についてその存在が知られており、中心金属に応じた幅広い反応性が見られる。我々は今年度までにニッケルと銅のジフルオロメチレン錯体を利用する触媒反応を開発しており、引き続いて白金等を中心金属とする他の(ジ)フルオロメチレン錯体への展開を継続する。またこれまでは、一炭素カルベン錯体であるジフルオロメチレン錯体の反応を開発してきた。今後はこれを、二炭素カルベン錯体(ジフルオロビニリデン錯体)、三炭素カルベン錯体(ジフルオロアレニリデン錯体)へと拡張したい。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Facile Synthesis of Polycyclic Aromatic Hydrocarbons: Bronsted Acid-Catalyzed Dehydrative Cycloaromatization of Carbonyl Compounds in 1,1,1,3,3,3-Hexafluoropropan-2-ol2017
Author(s)
Fujita, T.; Takahashi, I.; Hayashi, M.; Wang, J.; Fuchibe, K.; Ichikawa, J.
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Journal Title
European Journal of Organic Chemistry
Volume: 2
Pages: 262-265
DOI
Peer Reviewed
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