2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13946
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
國信 洋一郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40372685)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トリフルオロメチル化 / 位置選択的 / ヘテロ芳香族化合物 / Lewis酸-塩基相互作用 / Lewis酸 / 銅触媒 / トリフルオロメチルアニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品や農薬、有機機能性材料で重要な役割を果たすトリフルオロメチル基の位置選択的な導入反応の開発は、近年とても注目されている変換反応の1つである。しかし、医薬品や農薬、有機機能性材料に多く含まれる6員環ヘテロ芳香環への、位置選択的なC-Hトリフルオロメチル化反応は従来困難であり、ほとんど報告例がなかった。研究代表者らはすでに、従来報告例のなかった6員環ヘテロ芳香族化合物の2位およびベンジル位選択的なトリフルオロメチル化に成功し、研究成果を学術論文として報告している(2位選択的なトリフルオロメチル化:Nat. Commun. 2014, 5, 3387;ベンジル位選択的なトリフルオロメチル化:Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 10263)。本研究では、平成28年度に、かさ高いLewis酸を用いて6員環ヘテロ芳香環を求電子的に活性化しつつ、2位を立体的に保護することで、6員環ヘテロ芳香族化合物の4位選択的なトリフルオロメチル化反応を初めて達成することができた(J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 6103)。本反応では、トリフルオロメチル化のみならず、ペンタフルオロエチル化やへプタフルオロプロピル化のようなパーフルオロアルキル化、ジフルオロメチル化、ペンタフルオロフェニル化も進行させることができた。また、銅触媒を用いることで、N-(8-キノリニル)ピバルアミドの5位選択的なトリフルオロメチル化反応の開発にも成功し、学術論文として報告した(Org. Biomol. Chem. 2016, 14, 8092)。本反応は、様々な官能基が存在してもそれらの官能基を損なうことなく、5位のみで進行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、6員環ヘテロ芳香族化合物の4位選択的なトリフルオロメチル化反応を達成した。N-オキシド-BF2CF3を経ない6員環ヘテロ芳香環の2位選択的なトリフルオロメチル化反応については、現在論文にまとめているところである。6員環ヘテロ芳香環の3位選択的なトリフルオロメチル化反応はまだ達成できていないが、その代わりに当初予期していなかった、N-(8-キノリニル)ピバルアミドの5位選択的なトリフルオロメチル化反応を開発することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
既に報告している6員環ヘテロ芳香族化合物の2位選択的なトリフルオロメチル化反応では、6員環ヘテロ芳香族化合物のN-オキシド、引き続くN-オキシド-BF2CF3錯体の調製が必要であり、反応工程数や副生成物の増加が問題だった。そこで、それらの調製を必要としない、6員環ヘテロ芳香族化合物2位の直接的なトリフルオロメチル化反応について検討したところ、目的とする反応を進行させることができた。現在、論文投稿に向けて、データを集めているところである。また、6員環ヘテロ芳香族化合物の3位選択的なトリフルオロメチル化反応にも挑戦する。
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Causes of Carryover |
平成29年2月に、東京大学大学院薬学系研究科から、現職である九州大学先導物質化学研究所に異動した。その異動に伴い、異動前の準備や異動後の研究室の立ち上げなどで忙しく、研究に十分専念することができなかった。また、研究室の立ち上げ時期には、通常の研究室の運営に比べお金がかかると想定されたため、可能な限り平成29年度に繰り越して、本研究において研究室の立ち上げ時期に必要な物品の購入と研究の円滑な遂行に、本研究費を有効に使うことを考え、平成28年度の研究費を平成29年度に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究において研究室の立ち上げ時期に必要な物品の購入と、研究の円滑な遂行に必要なガラス器具や薬品などの消耗品の購入を予定している。また、得られた研究成果を積極的にアピールするために、学術論文や学会などでの研究成果の発表を予定している。
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