2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13947
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉沢 道人 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (70372399)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子カプセル / 芳香環 / 分子間相互作用 / 内包 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自己組織化により構築した分子カプセルのナノ空間を利用して、水中での生体必須分子の高感度な識別法を開発する ことである。その戦略として、申請者が開発した金属架橋カプセルを活用し、その多環芳香族骨格で囲まれたナノサイズの空間による 多点相互作用により、狙いとする生体分子の選択的な内包による識別を達成する。本年度は特に、(1)キサンチン類の識別を達成す ると共に、(2)生体分子識別のための新たな分子カプセルの合成に成功した。また、(3)テルペン類の蛍光識別法を開拓した。以 下にその研究成果の概略を述べる。さらに、ステロイドホルモンの識別に関する予備的な知見を得た。 1.分子カプセルによるキサンチン類の識別 キサンチン類は天然に広く存在し、メチル基の個数の違いによって異なる薬理活性を示 す。そこで本研究では、水溶性の金属架橋カプセルのナノ空間を利用して、水中でそれらの識別に挑戦した。その結果、3つのメチル 基を持つカフェインが高選択的に内包されることが、競争実験より明らかになった。また、結晶構造解析により、この識別にはCH-パ イ相互作用が重要な役割を果たしていることも解明した。 2.カチオンおよびラジカル骨格を有する分子カプセルの合成 既報の金属架橋カプセルは、中性のアントラセン骨格に囲まれたナノ 空間を有する。そこで生体分子の幅広い識別を目指して、アクリジウム骨格を有するカチオン性カプセルとジヒドロフェナジン骨格を有するラジカル性カプセルを合成した。それらの構造はNMR、MSおよびX線結晶構造解析によって決定し、分子内包能を明らかにした。 3.分子カプセルによるテルペン類の蛍光識別法 テルペン類を蛍光識別する新手法を開発した。アントラセン骨格を持つ分子カプセ ルに水中でテルペン類を内包することで、その構造に由来して異なる蛍光性を示し、その3Dマッピングに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究課題として計画していたステロイドホルモンの識別に関して、予備的なデータを集めつつ、生体分子のキサンチン類およびテルペン類の識別に関して十分な成果が得られた。特に、前者については、CH-パイ相互作用を活用することで、前例のないカフェインの高選択的な識別を達成した。また、後者に関して、種々のテルペン類を蛍光で高感度に識別できることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた知見を基に、来年度は水中での識別がより困難なオリゴ糖に挑戦する。有機溶媒中での識別は幾つか報告例があるが、水素結合が競合する水中のオリゴ糖の厳密な識別は達成されていない。また、開発した蛍光センシング法を活用し、オリゴ糖の微量検出を達成する。さらに、合成に成功した異なる多環芳香族骨格(カチオン性およびラジカル性)を有する分子カプセルを利用した生体分子の識別に検討する
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Causes of Carryover |
今年度は小規模実験を中心に基盤となる研究を行ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の知見を基に、次年度は大規模での合成実験とその化合物を使った様々な分析機器による精密物性解析を行う。
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Research Products
(24 results)