2017 Fiscal Year Research-status Report
自己組織構造形成に駆動される二重ラセン型配位高分子の精密合成
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16K13957
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小西 克明 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (80234798)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金 / らせん構造 / 配位高分子 / 発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機ユニットの自己組織構造形成を基軸として、二重らせん構造をもつ金チオラート直鎖配位高分子の精密合成を実現し、ラセン間での動的なAu-Au相互作用に立脚した刺激応答材料に向けた基盤を確立することを目指す。昨年度の研究では、ポリエチレングリコール鎖を末端に有する長鎖アルカンチオールから誘導される金チオラート配位高分子に加熱処理を加えると、強い発光性を示すようになることを見いだした。この発光はAu-Au間の相互作用に由来すると考えられることから、当初予想した二重らせん構造が形成されている可能性がある。本年度は、有機部位の構造(アルキル鎖部位の長さ、アミド基、フェニル基などの相互作用部位)の影響を引き続き調査し、発光性を示す配位高分子を得るためには、ある適切な長さのアルキル鎖が必要であること、適切な位置に相互作用部位を配する必要があることを明らかとした。さらに並行して上述の加熱処理による変化の本質を究めるために、動的光散乱、サイズ排除クロマトグラフィーを併用して追跡したところ、配位高分子合成直後には無発光性の10量体程度のオリゴマーが一旦生成し、その後加熱によりオリゴマーの成長(連結)により発光性の高分子種が形成されることが判明した。生成した発光性配位高分子のサイズは動的光散乱では10~20 nmと見積もられたが、サイズ排除クロマトグラフィーでは動的光散乱から予想されるよりも、分子量が極めて巨大であることが示唆された。この他にも、質量分析、NMRなども組み合せた解析を試みているが現時点では有意な結果は得られていない。得られた発光性配位高分子の構造情報を得るためには他の適切な分析法との組み合せが必要となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、ポリエチレングリコール修飾した長鎖アルカンチオールから誘導される金チオラートに適切な処理を加えると、発光性の配位高分子へと成長することが見いだされた。発光自体は、金-金間でのaurophilic相互作用に由来すると考えられるため、単純な直鎖配位高分子の一本鎖ではなく、二重らせん構造など高次の超構造が形成されるものと考えられる。さらにこうした超構造の形成においては、有機ユニット中のアルキル鎖間で働くファン・デル・ワールス力による自己組織構造形成が深く関わっていることも明らかとなった。これらの結果から、有機部位を適切にデザインすることで、外部刺激によって有機部位の自己組織構造の転移を誘起し、さらにそれを配位高分子の超構造変化すなわち金-金相互作用の変化に連動させることで可逆な応答特性を示す材料へと展開するために有用な知見を獲得することができた。このように、本研究はおおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で、特定の有機部位をもつ金チオラート配位高分子が強発光性を示すことが判明した。発光性は、Au-Au相互作用に由来すると考えられることから、有機部位間での相互作用を駆動力とする配位高分子の高次構造形成が重要な役割を果たしていると考えられる。今後は発光性を示すケースについて、分光学的手法に加えて顕微鏡を用いた手法を併用し包括的な構造同定をすすめることで、予想される二重らせん構造の形成に関する知見を取得する。さらに発光性を示さない配位高分子の構造についても調べ発光性の有無と高次構造の相関を考察する。さらに、これらで得られた知見を基盤として外的刺激により構造転移を通じた配向性のスイッチイングを実現するための有機部位の分子設計を模索し、将来的に刺激応答性の材料へと展開するための基盤を確立する。
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Causes of Carryover |
本研究を進める過程で、金チオラート配位高分子が強発光性を示す場合には、サイズ排除クロマトグラフィーで見積もられるみかけの分子量が極めて巨大となることがわかってきた。この結果は予想外であったが、自己組織化が関与した高次の超構造形成と発光特性の相関を示唆しており、本研究で目指す動的相互作用に立脚した刺激応答性材料の基盤となり得る。そこでさらに構造情報を取得するために、次年度まで期間延長して電子顕微鏡等による分析を追加検討する。 次年度の使用計画としては、試薬、ガラス器具などの消耗品(物品費)に20万円、学外での電子顕微鏡や原子間力顕微鏡の測定および成果発表に必要な旅費に20万円、その他論文投稿時の英文校正に5万円(計45万円)を予定する。
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