2016 Fiscal Year Research-status Report
分子性金属鎖を被覆したカーボンナノチューブ複合材料の開発
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16K13966
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
棚瀬 知明 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (50207156)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金属錯体化学 / ナノ分子化学 / 分子性金属鎖 / カーボンナノチューブ / 化学修飾電極 / パラジウム / 白金 / 多座ホスフィン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は申請者がこれまでに行った「多座ホスフィンに支持された分子性金属鎖(EMACs)」と「多座ホスフィンをドープした単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を利用した熱電変換素子」に関する2つの研究を基に,多座ホスフィンとCNTとの分子間相互作用を利用することでPd8核鎖を中心とするEMACsで被覆されたCNT複合材料の創製を目的とし,以下の項目について研究を行った。 (1)直鎖状4座ホスフィンmeso or rac-dpmppm (Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2PPh2)を支持配位子としたPd8核金属鎖を合成し,その構造・物性を明らかにするとともに,高温で解離生成したPd4核フラグメントの自己キラル認識を経たPd8核鎖の自発的整列について詳細な研究を行った(この結果はChem. Eur. J. 2017に発表した)。(2)Pd8核鎖を担持したCNT作製のための予備的研究として,Pd8核鎖を直鎖状ビスイソシアニドで連結した金属鎖ポリマーを含むナフィオンでコーティングしたグラッシーカーボン化学修飾電極を作製し,その電気化学的特性について分析を行った。特徴的な還元波が観測された。Pd8核鎖を直鎖状ビスイソシアニドで連結した金属鎖ポリマーの溶存挙動については,温度可変NMR及びUV-Vis-NIRスペクトルで分析を行い,溶存状態における連結構造についての知見を得た。(3)単層・多層CNT表面への多座ホスフィンのドープと金属(Au(I), Pd(II), Pd(0)やAu4核及びPd8核鎖等)の取り込みによる生成する金属鎖被覆CNTの分析法の一つとして,電子顕微鏡(TEM)観察の準備とデータ収集を開始した。また,Pd8核金属鎖の高分子状態における配向構造についての分析として,X線小角散乱(SAXS)の有効性を明らかにするための予備的実験をSpring 8で開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直鎖状4座ホスフィンmeso or rac-dpmppm (Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2PPh2)を支持配位子としたPd8核金属鎖を合成と構造・物性を明らかにするとともに,高温で解離生成したPd4核フラグメントの自己キラル認識を経たPd8核鎖の自発的整列について詳細な研究を行い,世界的に水準の高いChem. Eur. J. 2017に発表した(back cover pictureに採択された)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画どおり以下の項目について研究を進める。(1) 単層・多層CNT表面への多座ホスフィンのドープと金属(Au(I), Pd(II), Pd(0)やAu4核及びPd8核鎖等)の取り込みによる金属鎖被覆CNTの創製,(2)金属鎖被覆CNTのTEM・STM観察と伝導物性測定,について研究を行い,(1)(2)を組み合わせながら良好な系の探索を行う。項目(1)では,多座ホスフィンとCNTの分子間相互作用を利用して,PdやAuの金属鎖で被覆したCNTの創製を調書に記載した2つの手法により行う。項目(2)では,項目(1)で作成した金属鎖被覆CNTフィルムについてTEM及びSTMにより観察を行い,CNTを取り巻く金属の配列と量に関する情報を得,その結果を合成過程へフィードバックする。さらに項目(3)として,金属鎖被覆CNTを用いた化学修飾電極及び単分子素子の創製と電気化学測定を行い,担持した金属や金属鎖の化学的な応答を取り入れた複合的化学修飾電極の作製や,他大学共同研究拠点との連携により金属鎖被覆CNT1本を単分子素子としたトランジスタ回路等の構築を行う。このような一次元ナノ構造体が順調に創製できる場合は,同様の手法を2次元のグラフェンにも応用し,分子性金属鎖を基盤とした単分子素子集積に関する新たな展開を模索する。
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Research Products
(9 results)