2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13970
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢貝 史樹 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80344969)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アゾベンゼン / 光異性化 / 超分子ポリマー / 速度論 / 熱力学 / キラリティ / 超分子キラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,キラル分子集合体を構築する新たな手法として「光経路」の可能性を探求する。昨年度は、研究代表者が以前光照射前後で螺旋性が変化することを見出しているV字型分子に、光異性化特性を有するアゾベンゼンと水素結合能力を持つアミド基を導入した新規分子1を合成し、その会合特性を精査した。まず、光経路の対照経路となる、「熱経路」について調査した。新規分子1は、低極性有機溶媒(主にメチルシクロヘキサン)の高温溶液(分子分散状態)を冷却することで、ファイバー状の集合体を形成し、CDスペクトル測定において強いコットン効果を示した。この溶液に紫外光を照射すると、アゾベンゼンの異性化が進行することが吸収スペクトル測定より確認できた。また、異性化に伴って、ファイバー状の集合体が消滅することが、AFM測定などによって明らかとなった。 上記の紫外光照射溶液は、アゾベンゼン部位が会合性に乏しいシス体になった新規分子1のモノマー分散溶液と考えられる。そこで次に、このモノマー溶液に高強度の可視光を照射したところ、再びファイバーが形成されることが確認された。興味深いことに、この「光経路」によって得られた集合体のCDスペクトルは、「熱経路」による集合体とは反対のコットン効果が観察され、モノマー分子が反対のねじれ方で集積していることが示唆された。また、光の強度などによって、コットン効果の強度が変わるという結果も観察され、今後さらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、今回の発想の発端となる分子設計と集合条件に改良を加えることで、狙い通りの現象を具現化することができたと言える。また、再現性に関しても繰り返し実験を行うことで、本現象が間違いなく起こっていることを確認できた。したがって、研究は概ね順調に進んでいるものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
「光経路」によって分子がなぜ反転した超分子キラリティーを示す集合体を構築するかをさらに詳細に検討するため、短時間の光照射を連続的に行い、CDスペクトルの反転現象を精査する。 さらに、「熱経路」と「光経路」によって調製した集合体のCDスペクトルが反転することは確認されたが、このファイバーは異方性のある試料であるため、巨視的異方性 (linear birefringence: LB, linear dichroism: LD) によるアーティファクトが含まれていることが考えられる。このアーティファクトの度合いを検討するため、異方性試料のLDやLB測定を検討している。現在、共同研究として測定が可能な研究室を探している段階である。
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Causes of Carryover |
新規化合物の合成が計画通りに進まず、合成経路を再検討していたため、当該年度中の執行が 不可能となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
合成経路の再検討が完了したため、合成を進めるための試薬 購入に充てる。
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