2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13972
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原野 幸治 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任准教授 (70451515)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ材料 / フラーレン / 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である本年度は,フラーレン誘導体を用いた自己集合型有機ナノシートの合成,およびナノシートから形成される小胞体の単離を達成した.得られた成果の概要を以下に示す. (1)界面合成法を用いた自立型フラーレン分子膜の形成:五重付加型[60]フラーレンを構成分子として用い,液液界面を集積場として利用した自己集合型ナノシートの合成を検討した.フェニル五重付加型フラーレンPh5C60Hをトルエンに溶解し,水酸化カリウム水溶液との二層系において静置しゆっくりと塩形成を行うことで,トルエン/水の界面にPh5C60Kの膜を生成させることに成功した.この膜をマイクロメートル径をもつグリッドに転写し,透過電子顕微鏡で観察したところ,孔の上でも構造が壊れることなく自立性を保った自己集合型薄膜であることが明らかになった.詳細な電子顕微鏡像解析から膜厚は10ナノメートル以下と見積もられた.さらに,置換基を有する五重付加型フラーレンについても同様の薄膜を形成することが明らかとなった. (2)マイクロメートル径を有する小胞体の形成:フラーレン誘導体によるナノシート形成を検討する中で,アルキル側鎖を有するフラーレン五重付加体のカリウム塩R5C60Kについて,有機溶媒に溶解したのち水を徐々に添加することで,最大で2マイクロメートルの直径を有する小胞体(ベシクル)を形成することを発見した.このベシクルはろ過に引き続く乾燥の後も形状を維持した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度目標である自立型有機ナノシートの合成は達成された.またこのシートを用いた小胞体の形成という予期しない発見もあり,膜機能のみならず小胞体内水相を用いた化学の展開が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り,自立型有機ナノシートの詳細な構造解析を行い,機能のデザインへと展開する.また新たに見いだされた小胞体形成については,内部空間を用いた機能創製に挑戦する.
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