2016 Fiscal Year Research-status Report
二重項発光の特長解明:ラジカルは高エネルギー効率なELデバイスを実現できるか?
Project/Area Number |
16K13973
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
草本 哲郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90585192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラジカル / 発光 / 電子状態 / 二重項 / スピン |
Outline of Annual Research Achievements |
ラジカルは有機電界発光素子に応用することで高い電子→光子変換効率が実現できることが期待されており、その実験的な検証が重要課題となっている。本研究は、独自開発した発光性ラジカルPyBTMに関して、その光安定性と発光効率の向上手法、ならびに発光波長を制御する方法を確立する。また有機電界発光素子に応用することで、発光ラジカルが素子中で本当に高い効率を与えるかどうかを調べることを目的とする。 本年度は、発光ラジカルの光励起状態における安定性の向上と発光量子収率の向上、発光波長のコントロールという3点を目標に研究を進めた。その中で、ピリジンを2つ導入したトリアリルメチル(TAM)ラジカルbisPyTMはPyBTMに比べ5倍高い光安定性を示すことを見出した。電子不足部位であるピリジン骨格の導入によりラジカルの光励起状態における化学反応性が抑制された結果であると予想され、ピリジル基の導入が光安定性向上の有力な手法であることを明らかにできた。またPyBTMからなる金錯体について、ピリジル基の塩素原子をフッ素原子に置換した結果、溶液中における発光量子収率が2倍以上向上し20%に至ることがわかった。金イオンへの錯形成とフッ素原子置換の二つの手法が相乗的に発光効率に作用することを明らかにした。またPyBTMの窒素部位を化学修飾することで、ラジカルの分子構造ー発光機能ー電子状態の相関関係を調べた。化学修飾がラジカルのβSOMOのエネルギー準位に特に大きな影響を与え、結果として発光波長と電気化学特性、電子受容能にも影響を与えることがわかった。PyBTMとトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのルイス酸―塩基反応に基づき、発光効率を落とすことなく発光色を可逆にコントロールできることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載の通り、本年度は、発光ラジカルの光励起状態における安定性の向上と発光量子収率の向上、発光波長のコントロールという3点を目標に研究を進めたが、全ての目標を達成でき、さらに今後の研究発展につながる重要な知見を様々に得ることができたことから、研究は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、溶液状態のみならずマトリックスに担持した状態における発光ラジカルの光安定性と発光効率の向上を目指す。また発光ラジカルを実際に発光素子に導入し、本当に高い電子→光子変換効率が得られるかどうかを調べる予定である。現在までに、ポリマーに担持した発光ラジカルが溶液中よりも高い発光効率を示す知見を得ており、この知見を素子作成に応用することで良好な内部量子収率を示す発光素子が得られると予想している。
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Causes of Carryover |
当初、当該年度にスピンコーターの購入を予定していたが、この購入を見送ったことが次年度使用額が生じた理由である。今年度は高光安定・高発光効率を示すラジカルを新たに合成、同定し、基礎物性測定を行った後、スピンコーターを用いて、ラジカルをポリマー担持剤と共にガラス基板上にスピンコートすることを考えていた。研究を進める中で、新規物質合成において本研究の要となりうる分子を発見することができ、その合成経路の確立と基礎物性の詳細を明らかにすることが本研究遂行のために重要であることから、これらとその成果報告に注力し、結果としてスピンコーターの購入を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新物質合成、発光素子作製、物性測定に用いる試薬と器具を購入する。また研究成果を積極的に国内外の学会や学術論文誌に発表する。スピンコーターに関しては購入を検討する一方、他の研究で用いられている同様の装置について、装置が使用されていない空き時間に借用するなど、購入以外の方法(できるかぎり金銭的コストが抑えられる方法)も画策していく。
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Research Products
(22 results)
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[Presentation] 光るラジカル2016
Author(s)
草本哲郎
Organizer
錯体化学若手の会 北陸支部勉強会
Place of Presentation
金沢大学角間キャンパス(石川県金沢市)
Year and Date
2016-12-03 – 2016-12-03
Invited
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