2017 Fiscal Year Research-status Report
二重項発光の特長解明:ラジカルは高エネルギー効率なELデバイスを実現できるか?
Project/Area Number |
16K13973
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
草本 哲郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90585192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラジカル / 発光 / 光機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光分子を用いた電界発光デバイスは、原理的にエネルギー効率(電子→光子変換効率)が最大でも25%と低いという課題を有している。これに対しりん光や熱活性化遅延蛍光の利用などの解決法が提案されてきたが、一重項基底状態に基づくこれらとは一線を画す方法として、申請者はラジカル分子の二重項状態に着目した。ラジカルは原理的には100%の効率を実現できる可能性を有しているが、その化学不安定性のため分解しやすく未だ誰もこれを実現・証明できていない。本研究では、申請者が独自開発した優れた大気・励起状態安定性を誇る発光ラジカルを鍵物質とし、電界発光デバイスの発光源として組み込むことで、デバイスのエネルギー効率の革新的向上、ならびに二重項発光の特長の確立に挑戦する。本年度の研究実績は以下の通りである。 (1)ラジカルの凝集度が発光特性にどのような影響を与えるのかを調べるため、発光ラジカルをドープした分子結晶の発光特性を調べた。ドープ量の増加につれて、発光量子収率が低下するとともに、長波長領域にラジカルエキシマ―由来と思われる幅広な発光帯が表れた。このエキシマ―発光の寿命はラジカルモノマーに由来する発光の寿命よりも長いことを明らかにした。 (2)有機ELに適していると考えられるドナーアクセプター系発光ラジカルを新規に合成した。溶液およびポリマー中での発光量子収率は10%を超えることを見出した。これを有機ELに導入したが、正孔輸送材料であるmCBPが結晶化し膜が不均一となる課題が明らかとなった。 (3)金属配位部位を有する新たな発光ラジカルを合成し、金属イオン配位による発光増強を見出した。また本系の発光ラジカルでは通常の蛍光分子でみられる内部及び外部重原子効果(重原子による発光の減少)が観測されず、これはラジカルに特有のユニークな性質といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
有機ELに導入し得る幾つかの高安定・高発光性のラジカルを合成することができた。それらの一部については研究論文として発表することができた。合成したラジカルの一部について有機EL素子導入に挑戦した。EL発光実現には課題は残っており、適切な材料選択によりこの課題を乗り越える予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
有機EL作成において正孔輸送材料が不均一な膜を形成することが課題となっている。そこで、成功輸送材料を様々に変えて均一な膜を作成できる材料を探索する。同時に、ELの発光源として資する発光ラジカルの開発を進める。
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Causes of Carryover |
理由:デバイス作製のために計上していた予算に関して、デバイス作製のところで課題に直面し想定よりも少ない量のデバイスしか作製できなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。 使用計画:課題克服のために、様々な正孔輸送材料を用いて膜及びデバイス作製を試みる。また他の発光ラジカルについても発光デバイスに組み込む試験を行う。これらの研究遂行にあたり、物質合成、デバイス作製、物性測定に用いる試薬と器具、冶具を購入する。また研究成果を国内外の学会や学術論文に発表する。
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Research Products
(9 results)