2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13974
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
森 健彦 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60174372)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機熱電材料 / 有機伝導体 / 電荷移動錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、有機熱電材料が応用面から注目されているが、我々は高い伝導性を示す非TTF系有機伝導体(BTBT)2AsF6が熱電材料としても優れた特性を示すことを明らかにした。本研究ではこれまで熱電材料としてあまり検討されてこなかった低分子系有機伝導体に着目し、熱電性能を上げるための指導原理を探索する。本年度は主に熱電性能のフィリング制御による系統性を調べる目的でβ'-(BEDT-TTF)3(CoCl4)2-x(GaCl4)xの熱電特性について調べた。通常はフィリングが増大すると熱起電力Sは減少し伝導度σは増大するため、パワーファクターS^2σは比較的低ドープ域のどこかで極大を示すと考えられ、伝導性高分子ではこのモデルがよく当てはまる。上記の電荷移動錯体ではxを0付近から1.16まで変えることができ、これに伴って伝導層のBEDE-TTFの電荷は1+から0.42+まで減少する。このとき一番上のバンドにゼロからハーフフィルドを少し超えるレベルまで電子ドープが起こる。これに伴って熱起電力は単調に減少するが、伝導度も減少を示したため、パワーファクターはx = 0の母物質付近で最大となった。これはアニオンGaCl4がCoCl4よりも大きいため、負の化学圧力効果が働きトランスファーが小さくなって伝導度が減少したためと考えられる。熱起電力は低温で極大を示すが、バンド計算から熱起電力の温度依存性を理論的に計算することによって、逆に実測の熱起電力からバンド構造を決めているトランスファーを決めることができ、化学圧力の影響を定量的に見積もることができる。電荷移動錯体の熱電性能のドーピングレベル依存性の研究は数が少ないが、このように伝導性高分子と異なりドーピングレベル依存性は単純なモデルだけでは説明できないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった電荷移動錯体の熱電性能のフィリング制御について系統性を明らかにすることができ、これによって今後の方針を定めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
有機トランジスタ構造を用いた熱起電力の測定の実現を目指す。nonTTF系伝導体の探索とその熱起電力の検討を行う。フィリング制御の新たな可能性を探るため、伝導性ポリマーを含めて探索を行い、その熱電性能について検討する。
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Causes of Carryover |
電界効果下での熱起電力測定装置の開発が途上のため、一部を次年度に使用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度上半期に電界効果下での熱起電力測定装置用の消耗品として使用予定である。
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Research Products
(30 results)