2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13976
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
生方 俊 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00344028)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / 電子環状反応 / 軸不斉 |
Outline of Annual Research Achievements |
極小さな分子サイズでありながらキラリティの物性を大きく制御する光刺激応答性の新規キラル光分子スイッチを創製することを目的として、1,1’-ビナフチル骨格の2位にエテン骨格を一つ組み込んだヘキサトリエン構造を持つ化合物を合成した。 その化合物のへキサン溶液は、紫外光を照射すると可視域に新たな吸収帯が出現し、可視光を照射すると元のスペクトルに戻り、期待通りヘキサトリエン構造とシクロヘキサジエン構造の間で良好なフォトクロミズムを示すことがわかった。 高速液体クロマトグラフィーを用いて、紫外光照射時の光定常状態におけるシクロヘキサジエン構造への変換率を見積もったところ、90%以上であることがわかった。また、生成したシクロヘキサジエン構造は、加熱することでも元のヘキサトリエン構造に戻ることがわかった。熱による戻り反応の温度依存性を調べ、アレニウスプロットより、室温における半減期は550時間と見積もられ、生成したシクロヘキサジエン構造は比較的に熱的に安定であることがわかった。 本化合物を、キラルカラム装着高速液体クロマトフラフィーを用いて分析したところ、二つのピークが観察され、ビナフチル部位の軸不斉に起因するエナンチオマーの関係にある二種の異性体の分離に成功した。単離した一方の異性体に紫外光を照射すると、光反応初期過程においては、一つのシクロヘキサジエン構造のみが生成し、ジアステレオ特異的に光反応が進行することがわかった。また、生成した一方のシクロヘキサジエン構造を加熱すると元のヘキサトリエン構造に戻ることがわかった。しかし、可視光を照射すると、らせんを維持した元のヘキサトリエン構造と、らせんが反転したヘキサトリエン構造が1:2の割合で生成することがわかった。つまり、光と熱反応で異なるキラル選択性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)ビナフチル部位を組み込んだ光スイッチの創製、(2)光スイッチの光学分割とその光学異性体の光応答性評価、の二つの課題の実施計画を設定し、研究を進めてきた。(1)の計画においては一つの化合物を合成できた。(2)の計画においては、光学分割に成功し、その光応答特性を評価した結果、光と熱による特異な反応性を明らかにした。以上より、ほぼ計画通りに進行し、研究目的は概ね計画通りに達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
光学分割したキラル光スイッチの特異な反応性を見いだした。今後は、その類縁体を合成・光学分割し、反応性を調べ、特異な反応性のメカニズムを明らかにする。また、合成したキラル光スイッチをネマチック液晶に添加し、形成するコレステリック液晶の配列制御能を評価する。
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Causes of Carryover |
連携研究者の学生が丁寧に実験を行ってくれたために、分析装置のランプが切れた時や合成に用いるガラス器具が破損した時のために計上していた消耗品費の予算の消費が、計画時より抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
特異な反応性を示すことがわかった光分子スイッチの類縁体を、当初の計画より幅を拡げて合成する計画を立てたため、次年度の合成に必要な消耗品費が増額される予定。
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Research Products
(24 results)