2016 Fiscal Year Research-status Report
飽和炭化水素類の高度分子変換反応を指向したナノ空間制御型触媒の開発
Project/Area Number |
16K13988
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩井 智弘 北海道大学, 理学研究院, 助教 (30610729)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 飽和炭化水素 / 遷移金属触媒 / 炭素-水素結合活性化 / ピンサー型錯体 / ホスフィン |
Outline of Annual Research Achievements |
入手容易かつ安価な飽和炭化水素類の触媒的直接変換反応は、アトムエコノミーおよびステップエコノミーの観点から魅力的である。本研究では、精密に設計された金属錯体反応場を用いることで、飽和炭化水素類の高度分子変換反応を指向した触媒開発に取り組んでいる。 本年度は、脂肪族炭素-水素結合活性化に高い性能を示すことが知られているPXP-ピンサー型触媒に着目して研究を実施した。一般的なPXP-ピンサー型触媒の多くはリン原子上に嵩高い置換基(tBu基やiPr基など)を有しているが、反応点近傍が混み合っているため、基質のアクセスが制限される。また、配位子上置換基でのシクロメタル化がしばしば起こり、ピンサー型触媒の本来の機能が損なわれてしまう。こうした課題を解決すべく、実施者はリン原子上に嵩高いアルキニル基を有する新規PXP-ピンサー型配位子を設計合成した。本配位子は、リン原子から離れた位置に嵩高い置換基が張り出すために、反応点近傍に巨大なナノ制御空間を形成することが特徴である。目的のPXP-ピンサー型配位子は既知の化合物から単工程で収率良く合成できた。さらに、これらパラジウム及び白金錯体を合成し、各種スペクトル解析から対応するピンサー型錯体の生成を確認した。 また、高活性遷移金属錯体触媒の設計合成に関連する研究として、トリアリールメタン骨格を有するモノホスフィン配位子を開発した。そのパラジウムおよびロジウム錯体を合成し、NMR分光法と単結晶X線回折法を用いて構造解析した。本研究内容は、学術論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ制御空間を有するアルキニル置換PXP-ピンサー型配位子、ならびにその遷移金属錯体を合成した。この錯体は活性中心近傍に十分な反応場を有することから、触媒反応への応用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪族炭素-水素結合活性化を鍵とした飽和炭化水素類の触媒的変換反応を開発する。特に、アルキニル置換PXP-ピンサー型錯体が形成するナノ制御空間を利用した効率的な環化反応への適用を目指す。
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