2016 Fiscal Year Research-status Report
Hunsdiecker型反応の触媒的不斉化への挑戦
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16K13993
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
柴富 一孝 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378259)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不斉ハロゲン化反応 / 有機分子触媒 / 脱炭酸反応 / カルボン酸 / 塩素化反応 / 触媒的不斉合成 / SN2反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボン酸の脱炭酸を伴う分子変換反応は,生体内での物質生成経路として良く知られている。本反応はカルボン酸由来の副生成物が二酸化炭素のみであることから、反応系からの除去が容易であり、原子効率にも優れていることから、環境調和型の化学変換プロセスと言える。このため、近年キラル触媒を用いた同反応が注目されてきているが、これまでの成功例のほとんどは炭素ー炭素結合形成型の反応であり、酸化的な官能基化に成功した報告は少ない。今回申請者らは、独自に開発したキラル一級アミン触媒を用いて、βーケトカルボン酸の脱炭酸的不斉塩素化反応を開発することに成功した。具体的には、βーケトカルボン酸を10 mol%の軸不斉を有するキラルαーアミノエステル触媒存在下でNークロロスクシンイミドと反応させたところ、脱炭酸を伴う塩素化反応が進行して目的とするαークロロケトンが最高98%eeで得られることを見出した。本反応系は第2級、第3級いずれの塩素化合物の合成にも応用できる。単純ケトンの不斉塩素化反応によって同化合物を合成する手法はほとんど知られていないことから、有用なキラル塩素化合物の合成法となると考えている。 さらに、得られたαークロロケトンのSN2反応により、αーアジドケトンおよびαースルフェニルケトンが光学純度を損なうことなく得られることも見出した。本SN2反応は第3級炭素上であるにもかかわらず円滑に進行した。また、本手法を利用した生理活性アルカロイドの合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、カルボン酸類の脱炭酸的塩素化反応において高いエナンチオ選択性を示す触媒系を発見することができた。これはカルボン酸の脱炭酸的ハロゲン化反応の不斉化に成功した初めての例となる。当初目標としたエナンチオ選択性(90%ee)を大きく上回る、98%eeという高いエナンチオ選択性の実現に成功した。また、当初計画していたSN2反応によるαークロロケトンの誘導化反応にも成功し、αーアミノケトン、αースルフェニルケトンを簡便に不斉合成する手法を確立した。本成果は、Nature Communications誌に投稿し採択された。 上記のことから現在の進捗状況は当初の計画を十分に上回っていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
同様の触媒系を利用した、不斉フッ素化反応の開発を行う。求電子剤としてはNーフルオロベンゼンスルホンイミドやSelectfluor等を利用する。必要に応じて触媒構造の再チューニングも行う。 また、βーケトカルボン酸以外のカルボン酸類を利用した反応への展開も行う。αーシアノカルボン酸、αーホスホノカルボン酸等の利用を検討する。いずれもカルボン酸のα位に電子求引性基を持つことから、アミン触媒が脱炭酸を促進すると期待できる。Nークロロスクシンイミドを用いた塩素化反応をまず検討する。さらに、同反応で得られた塩素化合物のSN2反応による誘導化反応を試みる。アジド、アルキルチオール等を求核剤とした反応系を確立することで、様々なキラルアミン、およびチオエーテルを簡便に合成することができる。
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Causes of Carryover |
目的とした脱炭酸的塩素化反応の最適反応条件を探索するにあたって、予定よりも少ない試行回数で効果的な触媒系を発見することに成功した。以前に別の反応のために開発したキラルアミン触媒の不斉制御機能および汎用性が予想以上に高く、ほぼそのままの触媒構造で当該反応にも適用できたことが大きな要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度検討するαーシアノカルボン酸の脱炭酸的塩素化反応の開発研究に用いる。本反応では、昨年度開発したβーケトカルボン酸を基質とした反応とは中間体の構造にやや相違があると考えられるため、触媒構造を再度スクリーニングする必要がある。繰り越した資金を利用して多くのキラル触媒候補分子を検討することで、短期間での最適触媒の発見を目指す。
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Research Products
(14 results)