2016 Fiscal Year Research-status Report
金属近傍での不斉ラジカル反応場の創出:かさ高い光学活性アミノ酸とアザスピロ環合成
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16K13995
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西形 孝司 山口大学, 創成科学研究科, 准教授(テニュアトラック) (90584227)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アミノ化 / アミノ酸 / アルキル化 / 銅触媒 / ラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では金属触媒近傍でラジカル種の反応場を創出し、それを利用してニトロソ化合物へのかさ高いアルキル基のエナンチオ選択的導入により、光学活性アミノ酸及びアザスピロ環の合成法開発を行うのが本研究の目的である。具体的には、鉄触媒のハロゲン化アルキル(R-X)への一電子移動によりアルキルラジカル(R・)を生成し、続くニトロソ化合物(R-N=O)への付加-還元により反応の達成を目指すものである。 本年度は新規アミノ化反応の開発を目的として、現在までの研究で次のことが明らかとなった。 2-ブロモカルボニル化合物とニトロソ化合物を金属触媒下で反応後に、ヨウ化サマリウムで還元することでアミノ酸誘導体を得ようと計画していたが、様々な検討を行うと、ニトロソ化合物ではなくアミンを用いることでカルボニルのアルファ位のアミノ化に成功した。アミンを用いることができることが分かったため、アミノ酸を得るためにニトロソ化合物との反応後に還元反応を行わずに済む点は、当初の予想と反してすぐれた点である。 具体的な反応条件は、銅触媒、トリフェニルホスフィン、リン酸カリウム、tBuNH2と2-BrMe2CONHPhをトルエン中室温で20時間撹拌すると、対応するアミノ化体を99%で得ることに成功した。トリフェニルホスフィンは2-BrMe2CONHPhから副生するオレフィンの生成を抑えることができる。リン配位子なしでも反応は進行するが、オレフィン生成が目立った。また、1級アミンだけでなく2級アミンやアニリン、アミドとの反応も円滑に進行することが分かった。 得られたアミノ化体は非常にかさ高い4級炭素中心をもち、本方法以外でのこの構造の合成は立体障害のため非常に困難である。今後は、アンモニアとの反応や不斉反応への展開、そして、薬理活性物質glucocorticoid receptor modulator intermediate(III)の合成を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績にも記載したが、当初の予想とは大幅に優れた結果がでており、進捗状況は計画以上のものがある。 まず、当初は反応後にアミノ酸を誘導するために還元操作を必要とするニトロソ化合物を反応剤として想定していた。しかし、検討を進めていくと、ニトロソ化合物が還元されたアミンで反応が進行することが分かった。もし、アンモニアと反応させることができればさらに簡便なアミノ酸合成法になりうる。この反応で得られるアミノ化体はかさ高い点も特筆すべき点である。通常は、かさ高い基質に対するアミノ化はSN1反応を行うのが一般的であるが、電子不足な2ーブロモカルボニル化合物ではこのような置換反応は行いにくい。それにもかかわらず、銅触媒存在下、室温という非常に穏やかな条件で生成物が得られる点は特筆すべき点である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、中間体として想定される銅アミドを合成して反応機構の解明や反応に関するさらなる知見をえる。また、本反応ではリン配位子が効果的であることから不斉リン配位子を用いることで不斉第4級炭素中心が構築できるか挑戦し、最終的にはアンモニアを今回の不斉アミノ化に用いることで、非天然アミノ酸の効率的な合成を実現する。
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Causes of Carryover |
当該年度の予算は当初の計画とは違ったものになった。その理由は、報告書にも記載したが、当初計画していた研究内容よりも優れた結果が得られ、研究の方向性が少し変わったためである。購入試薬や発表を想定していた学会への参加も次年度に見送られることになったため、使用額に変更があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
約145万円の残額は次年度に繰り越し、当初の計画以上に得られた結果を残りの年度で円滑に終了させるための費用および本プロジェクトのまとめとして学会発表するために使用予定である。
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