2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13997
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
秋山 隆彦 学習院大学, 理学部, 教授 (60202553)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不斉合成 / 有機分子触媒 / NMR / 選択的合成 / 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
優れた不斉触媒反応の開発は,有機化学における最も重要な課題の一つであり,効率の良い不斉触媒反応の開発研究が活発に行われている。しかし,優れた不斉触媒,不斉配位子等を見出すためには,high through-put screening 等の技術も開発されているものの,試行錯誤的に膨大な数の実験が必要であるのが現状である。我々は,(R)-BINOL由来のキラルリン酸を2004年に開発し,キラルリン酸を用いた不斉触媒反応の開発研究を行っている。近年,キラルリン酸を用いた非対称化反応を伴う臭素化反応による,キラルビアリールの不斉合成反応を見出した。本臭素化反応に最適なリン酸を選択する際に,様々な3,3'-位の置換基を検討した。その研究のなかで,基質とリン酸との錯体の1H NMRスペクトルを解析する事により,優れた触媒,置換基を選択するための有益な情報が得られる事を見出している。すなわち,HaとHbの化学シフトの差δ(Ha-Hb)と,不斉収率に相関関係が見出された。良好な不斉収率を与えたリン酸は,大きな化学シフト差を示した事から,実際の実験を行う事なく,NMR実験のみで優れた触媒を見出す事ができると考えた。また,本手法は,触媒の予測のみならず,適用可能な基質の予測へ展開できる可能性についても明らかにしている。我々が見出した,NMR実験による触媒の最適化という概念の一般化を目指して,この概念が,どこまで適用可能であるか,その展望と限界を明らかにし,更に本手法が適用が可能な不斉触媒系を探索することにより,触媒予測の一般的な方法論へと展開することを目指している。 本年度は,主に過去に合成した基質を用いて,キラルリン酸との錯体の1H NMRの測定実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに報告した臭素化反応の基質を用いて,リン酸との1:1錯体の1H NMRを測定し,優れた不斉収率を与えた基質と低い不斉収率を与えた基質との比較を詳細に行った。その結果,これまでの予想通り,多くの基質において,ある程度の相関関係が見出された。
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Strategy for Future Research Activity |
1H NMRによるリン酸と基質との比較実験を幅広い種類の不斉反応に適用する。例えば,イミンの水素移動型還元反応によるアミンの不斉合成,キラルビアリールの不斉合成反応,アシル化反応など,数多くの反応に着目し,NMR実験を遂行する。さらに,実際に触媒及び基質を合成し,NMR実験と実際の合成実験により得られる不斉収率との比較を行う。それにより,NMR実験による最適触媒の推測が可能になるように適用可能例を広げていく。
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Causes of Carryover |
平成28年度は,基質及びキラルリン酸の多くが研究室にストックのあったため,新たに合成する必要があまりなかった。そのため,試薬等を多く購入する事が不要になった。また,1H NMR実験を行うための重溶媒も研究室のストックを用いる事ができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,新たな基質及びリン酸を合成する必要があるため,試薬,溶媒,さらにはNMR実験を行うための重溶媒を新たに大量に購入する必要がある。また,研究成果の発表も行うための予算(論文の校正,投稿料)も必要である。
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