2018 Fiscal Year Research-status Report
自己集合体内部の疎水環境を活かした完全中性条件下でのエノールの反応化学
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16K13998
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
草間 博之 学習院大学, 理学部, 教授 (30242100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光反応 / エノール |
Outline of Annual Research Achievements |
有機合成反応はもっぱら有機溶媒を媒体として行われてきたが,近年では有機溶剤に替わる様々な媒体,反応場の利用が試みられるようになっている。本研究は,これまで反応場として積極的に利用されてこなかった人工二分子膜等の自己集合体の疎水的内部環境を利用することで,他の媒体中では利用が容易でないエノールを反応活性種とする分子変換法の開発を主眼とするものである。 これまでの検討により、本研究目的を実現するための基礎となる不飽和カルボニル化合物の光エノール化を溶液中にて効率的に実現可能な基質を複数見出すことに成功し、本年度は主に、反応場としての自己集合体としてミセルの利用を検討した。残念ながら、ミセル中においても光エノール化が進行することは確認できたものの、主題とする分子変換反応の開発には至らなかった。しかしこれらの検討結果は、今後の検討を進める上での有益な情報となると考えている。 また、ガンマー位に引き抜き可能な水素をもつアシルシランのNorrish II型光開裂反応により、ケイ素置換エノールを発生させる検討についても継続して実施し、溶液中にて高効率でケイ素置換エノールが発生できること、さらに生じたエノールが一般のエノールに較べて高い熱力学的安定性を有することを確認した。また不飽和アシルシラン類の光1,5-水素移動によるケイ素置換ジエノールの発生についても検討を実施した。この検討では光反応自身が複雑化してしまうことが明らかとなり、目的のジエノールを効率的に発生させるためには、より詳細な分子設計を要することが分かった。 今後の検討では、これらの手法で発生させたエノールの反応についてより詳細に検討を実施する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主目的は各種カルボニル化合物の光反応により中性条件で発生させたエノール類を活用して、新たな分子変換反応を開発しようとするものである。これまでに効率的にエノールを発生可能な基質、反応条件を見出すことに成功しているが、これを用いて求電子剤等との反応を実現するには未だ至っていない。研究目的として掲げた一部の課題については実現できているという点では一定の成果は出ていると言えるものの、主目的である分子変換反応の開発には更なる検討を要するという点では、進捗状況はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、これまでに得られた光エノール化に関する知見をもとに、これをより疎水的な反応場を構築可能と考えられる人工二分子膜中で実施することにより、エノールの長寿命化、さらには各種求電子剤等との反応を実現すべく詳細な検討を実施する。また人工膜中での反応に限定することなく、ケイ素置換エノールを活用した新しい分子変換手法の開発研究も展開する計画である。
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Causes of Carryover |
本年度は光異性化によるエノール生成に適した反応基質・反応条件の探索を中心に行っており、当初想定していたよりは薬品等消耗品類の支出額が少なくても研究の遂行が可能であったため。 (使用計画) 31年度は、光反応で発生させたエノール類の人工二分子膜等自己集合体内部ででの各種有機分子との反応を詳細に検討する計画であるため、次年度使用額をこの検討のために使用する計画である。
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