2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀中 順一 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00313734)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オプティカルレオメーター / 光弾性 / 異方性 / 高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子液体や高分子ゲルのレオロジー(粘弾性)を測定する装置としてよく用いられる回転型レオメーターにおいては、試料に含まれる溶媒が揮発しやすい条件では測定できない、少量の試料では正確な測定が難しい、という2つの特徴が問題となっている。本研究はこれらの問題を同時に解決するため、密閉状態のまま測定できるオプティカルレオメーターの開発および測定原理の実証を行うことが目的である。当初計画では、光源のレーザーおよび倒立顕微鏡を新調する予定であったが、交付額の範囲内で既存の装置のオーバーホール及び修繕を行って利用した。当初計画においてレオメーターの力の検出機能を担う光ピンセットの設定が、既存の光源の光量不足が一因となりうまくいかず、現状では改善の余地がないため、利用する光弾性そのものを変更したオプティカルレオメーターによって密封系のレオロジーにアクセスする方式に切り替え、装置の開発を進めた。基幹装置となる光弾性装置を購入し、その他のミラーや波長板、偏光子などの各種光学素子は既存のものを流用した。本研究の大きな特長である光を用いて得られるミクロな情報と実際において重要なマクロなレオロジーを経験的に関係づけるという概念を維持するために力学的特性を調べやすい固体試料から測定を開始し、関連づけの基礎データを蓄積している段階である。同時に上記の二問題を解決するための密閉試料の測定に向けた装置の作製も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述の通り、現状の回転型レオメーターにおける問題を解決するために、少量の試料であっても正確に測定すること、試料の揮発性が高い場合でも問題とならいような密閉状態を実現できること、を特徴とする新しいレオメーターの開発を進めた。当初計画では、力の検出をレーザー光に補足された微粒子を用いる光ピンセット方式を採用する予定であったが、光源の光量不足が一因となり変更を余儀なくされた。密閉状態での測定を実現するためには、光を利用した力または歪みの測定方式は必要であると判断し、従来とは全く異なる新たな光弾性現象に着目したオプティカルレオメーターの開発を進めることとなった。新たに採用した方法では、光学素子によって規則正しい状態にした光が高分子の試料を通過すると応力が付与された、あるいは歪みが与えられた高分子の分子形態に応じた高分子固有の光学的異方性によって光の状態が変化することを利用する。この方式では、光の状態を検出する方法を工夫することによって、強い光源を必要とせず高感度に高分子の分子形態の変化を捉えることが可能であると予想される。本研究の萌芽性のある特長である光を用いて得られるミクロな情報と実際において重要なマクロなレオロジーを経験的に関係づけるという概念の実現性を確かめるため固体試料の測定から取りかかった。マクロなレオロジーの測定は、試料の状態に応じて従来型の伸長型力学特性を測定する装置を用いている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年に引き続き、新たな光弾性現象に着目したオプティカルレオメーターの開発を進める予定である。本方法では、高分子の分子形態に応じた高分子の光学的異方性が試料を通過する検出(測定)光の状態変化にわずかに反映される。なお、従来の光弾性測定装置では光弾性則と呼ばれている高分子鎖の直線的な一方向への偏りと高分子全体の力学的状態を詳細に結びつけることが行われていたが、本研究が目指す方式では、高分子の直線的な偏りだけでなく、立体構造に関する規則性も同時に検出できることが特長である。しかし同時にふたつの力学特性を完全に分離して検出できる訳ではないこともわかっており、両者をおのおの正確に評価するための測定手法の確立を進めなければならない。本研究の萌芽性のある特長である光を用いて得られるミクロな情報と実際において重要なマクロなレオロジーを経験的に関係づけるという概念は維持する方針である。本オプティカルレオメーターによって二種類の異方性が測定可能であるということは、このミクロとマクロの相関付けも二重に行わなければならないことになる。直線的な偏りに関するマクロな力学測定はほぼ全ての高分子について大きな困難もなく行えると見込んでいるが、立体構造に関する方は試料の選択や応力またはひずみの定量性を確保することは比較的難しいと予想している。天然高分子や高分子ではない糖類などの試料を使用することも視野に入れて研究を進める予定である。
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