2016 Fiscal Year Research-status Report
蛍光ナノシートによる生物環境センサーの創製と専用デバイスの開発
Project/Area Number |
16K14009
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武岡 真司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20222094)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薄膜型蛍光センサ / 酸素センサ / 温度センサ / pHセンサ / 高分子薄膜 / ナノシート / レシオ型計測 / デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
生物が快適に生存するためには、温湿度、酸素濃度、pHなどの環境因子が適度に調節されている必要があるが、複数箇所で複数因子をリアルタイムで計測するには煩雑で高価なシステムが必要となる。本研究では、対象表面に絆創膏の様に貼付できる薄膜型蛍光センサーと計測デバイスを開発し、その実用性を評価することを目的としている。 平成28年度は、温度・酸素用蛍光分子候補を封入した温度・酸素用蛍光ナノシートを調製、参照蛍光ナノシートと複合させてレシオ値の時空間分解能を膜厚に対して評価する。湿度・pH用蛍光高分子を設計し合成することを目的とした。 温度センサとして、温度応答性蛍光分子をEuDT(Eu-tris (dinaphthoylmethane)-bis-trioctylphosphine oxide)に絞り込み、ナノシート用ポリマーをポリメチルメタクリレート(PMMA)に決定した。参照蛍光分子をRhodamine 800としてポリスチレンナノシートを選択した。各々のナノシートの蛍光スペクトルの温度特性を蛍光分光光度計にて測定すると共に両者を重ねた積層系について蛍光顕微鏡にて蛍光強度を測定し、温度に対するレシオ値の検量線を作成できた。 他方、酸素センサとして酸素応答性蛍光分子をPtOEP(Platinum octaethyl porphyrin)に絞り込み、ナノシート用ポリマーはポリスチレンとした積層型ナノシートを調製した。酸素分圧を変化させたガスによって平衡状態とした水中で酸素分圧に対するレシオ値の検量線を作成した。時間分解能は、ガラス基板に貼付して表面に混合ガスをスポットでパルス状に噴き付けて解析し膜厚の影響を明らかにした。 pHセンサとして、フルオレセイン誘導体を官能基を導入した合成高分子に結合させたプロトタイプについて、pHの検量線を作成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、温度と酸素を対象とした薄膜型蛍光センサの開発を計画していたが、これが早期に見通しを立てることができたので、pHセンサ用の高分子の合成と検量線作成まで踏み込めた。レシオ型温度センシングナノシートは論文ならびに国際会議での発表ができた。 他方、デバイス化に関しては、シンガポールの共同研究先が具体的な計画に入ると共に、新たに国内でも共同研究の見通しを付けてプロジェクト化できたので、デバイスならびに観測用のカメラ周りに関しては、平成29年度での進展が期待できる。 また、前倒しで進めて来たpHセンサに関しては、フルオレセインを高濃度担持できる高分子の設計を何度かやり直さなければならなかったものの、候補高分子の見通しを立てることができた。但し、pHの異なる液滴による計測を試みたところ、液滴そのものの形状と観測場所によるデータの相違、乾燥に伴うデータの変化などの課題も見つかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は湿度センサを計画しているが、そもそもナノシート自体の諸物性やナノシートに担持した蛍光分子が湿度の影響を受けやすいことに基づいているものの、蛍光以外の原理による湿度センサによる検量線の作成が必要となる。そこで導電性高分子からなるナノシートの湿度感受性を利用したい。また、カッティングプロッターなどによるナノシートの成形や別途開発しているインクジェットプリンティング法によるナノシートの構築などの技術を用いて、複数種のナノシート型センサをパターン化した積層型シートを構築する方策である。 更には、専用デバイスの開発についても共同研究者と綿密な打ち合わせを行い、プロトタイプを試作して、観測データの取得を行う予定である。
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Research Products
(6 results)