2016 Fiscal Year Research-status Report
主鎖の二次構造が制御されたテレケリックポリマーの合成と特異構造高分子構築への活用
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16K14011
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
三田 文雄 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (70262318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | テレケリックポリマー / らせん共役高分子 / ロジウム触媒 / 末端構造制御 / 光学活性 / 薗頭-萩原カップリング重合 / ポリフェニレンエチニレン / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) テレケリックポリアセチレン誘導体の合成:フェニルアセチレンをRh触媒を用いて重合し,重合後に停止剤と活性末端を反応させることによってポリマー末端への置換基の導入を検討した。停止反応の進行を確認するために,得られたポリマーについて各種スペクトル測定を行った。4-シアノベンジルブロミドを停止剤に用いた場合,酢酸で重合を停止したポリマーには無いシアノ基に由来する吸収が確認され,停止剤が導入されていることが分かった。 2) テレケリックポリアリレンエチニレン誘導体の合成:D-ヒドロキシフェニルグリシンから合成したポリフェニレンエチニレン1と,D-ジヨードヒドロキシフェニルグリシンモノマーおよびp-ジエチニルベンゼンの薗頭-萩原カップリング反応により,末端にヨードフェニレン基およびエチニルフェニレン基を有するテレケリックポリマー2および3を単離した。さらに,2と1,6-ジエチニルピレン,3と1,4-ジブロモナフタレンの薗頭-萩原カップリング重合を上記と同様の条件で行い,ポリマー4および5を単離した。反応後,ポリマーの分子量が増大したことから,期待通り進行したことが示唆された。いずれのポリマーも正の励起子キラリティーに基づくコットン効果を示したことから,前駆体のポリマーと同様に,右巻きの折り畳みらせん構造を形成していると示唆された。4の発光は2に比べ21 nm長波長側に観測され,蛍光強度が16%増加していたことから,ピレンが主鎖に組み込まれたと考えられる。4の蛍光量子収率は21%であり,2よりも4%高かったことから,ピレンは蛍光量子収率の増大に寄与していることが示唆された。2と4の励起スペクトルの形状に顕著な差は認められず,ピレンの励起スペクトルとは明確な違いがあったことから,4はピレン環が共役系に組み込まれた主鎖由来の発光を示していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,(1) 二次構造が明確に制御されたポリアセチレン,ポリフェニレンエチニレンを主鎖とし,両末端にビニル基,エチニル基をもつ新規テレケリックポリマーの合成 (2) 両末端基の高効率で選択的な結合反応 (3) 生成するポリマーの二次構造の制御 (4) テレケリックポリマーの濃厚溶液および固体状態での配列の制御 (5) 網目構造の制御されたネットワーク状ポリマー合成へのチャレンジ (6) 生成ポリマーの光・電気機能の評価 を目的とする。本研究の特徴は,二次構造の明確な共役高分子をテレケリックポリマーの主鎖に活用し,主鎖がランダム構造のテレケリックポリマーでは達成し得ない高い反応性ならびに高次構造の制御された新規ポリマーの構築を目指す点である。平成28年度は以下の検討を計画し,前述したとおり,これらの計画を概ね達成することが出来た。 1) テレケリックポリアセチレン誘導体の合成:置換ポリアセチレンの両末端への官能基導入を実施する。開始末端には,官能基を有するロジウム錯体触媒により,ビニル基などを導入する。停止末端には,求核置換反応を受けやすいベンジル誘導体を活用してビニル基などを導入する。導入する重合性基として,ビニル基に加えて,ヒドロキシ基,アミノ基,カルボキシ基も検討する。 2) テレケリックポリアリレンエチニレン誘導体の合成:まず,ジハロゲン化モノマーとジエチニルモノマーの薗頭-萩原カップリング重合に,単官能性化合物を添加する方法を試みる。この経路は重合混合物に単官能性化合物を添加するのみであり,合成操作の簡便性が利点である。生成高分子の両末端にエチニル基を定量的に導入できるかがポイントとなる。カップリング重合条件と,単官能性化合物であるトリメチルシリルアセチレンの化学量論比ならびに導入のタイミングを最適化することにより,末端へのエチニル基の導入率を100%に近づける。
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Strategy for Future Research Activity |
1) テレケリックポリマーの末端結合反応:テレケリックポリマーの重合反応,すなわち,高分子末端反応性基の結合反応を引き続き検討する。薗頭-萩原カップリング,ヘックカップリング,オレフィンメタセシスなどの,温和な条件でポリマー末端間を結合可能な遷移金属触媒反応を用いる。反応条件の最適化にあたっては,応募者らが以前報告しているノルボルネン誘導体のメタセシス開環重合(J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 10546)などの遷移金属触媒重合に関する知見を活用する。リンカー部分として,柔軟なメチレン鎖ならびに,剛直な立体配座をもつビナフチレン基などを検討し,テレケリックポリマー結合部の結合角,二面角を制御して,得られるテレケリックポリマーの重合体にさらなる高次構造を誘起する。 2) テレケリックポリマーの配列制御と網目構造の制御されたネットワーク状ポリマーの合成:テレケリックポリマーの濃厚溶液を調製し,液晶状に配列させる。この検討にあたっては,応募者が報告しているらせんポリアセチレンのコレステリック液晶形成(Macromolecules, 2007, 40, 7079など)に関する知見を活用する。配列したテレケリックポリマーの末端間のオレフィン重合,アセチレン重合を行い,ネットワーク状ポリマーの合成を試みる。テレケリックポリマーの分子量分布が広く,目的とするネットワーク状ポリマーの生成効率が低い場合には,分取HPLCにて分子量分画を実施する。 3) テレケリックポリマーの重合体の構造ならびに光・電気機能評価:原子間力,透過型電子顕微鏡,X線回折測定により固体構造を解析し,溶液中でのコンホメーションとの関連を解明する。フォト・エレクトロルミネッセンス特性,光導電性,ホール輸送性を測定する。
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[Presentation] ペプチド-共役分子ハイブリッドの合成2017
Author(s)
佐藤 壮起, 高岡 慎弥, 宮城 雄, 三田 文雄
Organizer
精密ネットワークポリマー研究会 第10回若手シンポジウム
Place of Presentation
近畿大学 東大阪キャンパス(大阪府)
Year and Date
2017-03-03 – 2017-03-03
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