2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14031
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
樫田 啓 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30452189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 核酸 / 多重鎖 / 水素結合 / 人工核酸 / 人工塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では人工核酸aTNA骨格に複数の水素結合部位を有する人工塩基を導入することで多重鎖形成可能な新規人工核酸の創製を目指している。本年度は主として1)2-アミノピリミジンオリゴマーの合成・機能評価、及び2)シアヌル酸オリゴマーの合成・機能評価について検討した。 1)2-アミノピリミジン(P)はアデニン同様の水素結合部位を両面に有するため、チミンオリゴマーの複合体形成が期待できる。そこで、蛍光色素と消光色素でラベル化したこれらのオリゴマー(P10およびT10)を合成し、蛍光スペクトル測定によって複合体形成を評価した。その結果、P10とT10は1:2の量比で三重鎖を形成することが明らかとなった。また、その際一本鎖から一段階で三重鎖を形成することを明らかにした。アデニン・チミンなどの天然塩基による三重鎖形成においては二重鎖を経由した後に三重鎖を形成することが知られている。従って、本研究で合成した人工塩基は天然とは異なる経路で三重鎖を形成するという興味深い性質を明らかにすることが出来た。 2)シアヌル酸はチミン同様の水素結合部位を両面にもつため、アデニンや2-アミノピリミジンとの複合体形成が期待できる。本年度、シアヌル酸オリゴマーの合成経路を種々検討し、これを高収率で合成する手法を開発した。また、シアヌル酸オリゴマーの多重鎖形成能についても評価を進めており、シアヌル酸とアデニンオリゴマーが二重鎖を形成することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では2か年の研究期間において1)両面性水素結合型人工塩基オリゴマーの合成スキームの確立、2)人工塩基導入オリゴマーによる多重鎖形成能の評価、3)合成した人工核酸多重鎖の材料としての応用について課題を検討することを目標にしている。このうち1)については初年度において2-アミノピリミジン及びシアヌル酸オリゴマーの合成スキームを確立することが出来た。また、その結果として15量体程度のオリゴマーを高収率で合成することに成功した。また、2)については2-アミノピリミジンとチミンとの複合体形成について重点的に検討を進め、これらによるオリゴマーが三重鎖を形成することを明らかにすることが出来た。更にその際、天然核酸とは異なるメカニズムで三重鎖を形成するという興味深い性質を明らかにすることが出来た。 これらの成果から本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度において、本研究の基盤となる人工核酸の合成手法の開発、及び多重鎖形成能評価系の確立を実現することが出来た。そこで、平成29年度は前年度の結果を元に以下の点について検討を進める。 1.前年度において2-アミノピリミジン・チミン間、及びシアヌル酸・アデニン間の複合体形成について検討した。そこで、2-アミノピリミジン・シアヌル酸間の複合体形成について重点的に検討を進める。これらは相補的な水素結合部位を両面にもつため、二重鎖、三重鎖更に大きな複合体を形成することが期待できる。この複合体形成について蛍光分光測定を中心に、質量測定、ゲル電気泳動などを利用しつつ検討する。 2.開発した人工核酸をセンサーとして応用することを検討する。具体的には、小分子検出及び金属イオンセンサーとしての展開を図る。これまでに天然核酸を利用した材料について数多くの例が報告されているが、本研究で開発した人工核酸は天然とは異なる多重鎖形成が期待できるため、天然では実現しえない材料としての応用が期待できる。
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Causes of Carryover |
当初の計画では人工塩基モノマー合成に必要な試薬やオリゴマー合成時に必要となる蛍光色素モノマーなどに多くの予算を割り当てていた。しかしながら、人工塩基合成モノマーの簡便な合成方法を開発することによって予想以上に高収率にオリゴマーが得られたことから想定よりも使用額を低く抑えることが出来た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
確立した手法を元に様々な配列をもつオリゴマーを合成し、その機能評価を進める。そのため、前年度以上に有機合成試薬や核酸合成試薬を使用する予定である。また、積極的に研究成果を学会・論文発表することで社会に発信する予定であり、そのための予算を計上してある。
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Research Products
(3 results)