2016 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞特異的mRNAの四重らせん構造に対する分子標的型光線力学療法の創製
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16K14042
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
三好 大輔 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (50388758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川内 敬子 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 講師 (40434138)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | mRNA / 四重らせん構造 / 光線力学療法 / がん / リガンド |
Outline of Annual Research Achievements |
低侵襲ながん治療法である光線力学的治療(PDT)には、正常細胞に対する副作用と生体深部のがんに適用できないという問題がある。これらの問題を解決するために本研究では、分子標的光感受性物質(Molecular-Targeted Photo-sensitizer: MTPS)を開発し、分子標的型PDTを世界に先駆けて提唱することを目的する。 研究開始年度の2016年度では、がん細胞で高発現しているVEGFやNRASのmRNAが形成する四重らせん構造に対するMTPSをフタロシアニンやナフタロシアニン骨格から開発することと、分子標的型PDTで実際に標的とする核酸が細胞内で形成する構造に関する知見を得ることを試みた。その結果、亜鉛を配位したアニオン性フタロシアニンが、NRAS mRNAが形成する四重らせん構造に特異的に結合し、光照射により活性酸素を産生し、四重らせん構造を切断することが見いだされた。これらの結合と切断は、過剰の二重らせん構造を形成するRNAやtRNAが存在しても行われることも確認され、アニオン性亜鉛フタロシアニンのMTPSとしての高い特異性が示された。さらに、これらの知見をもとに、がん細胞を用いてアニオン性亜鉛フタロシアニンの効果を検証したところ、がん細胞内のNRAS mRNAとNRASタンパク質の産生を抑制することができ、最終的に細胞死を誘導できることが明らかとなった。これらの研究成果は、多くの学会において発表するとともに、論文投稿準備中である。 また、標的となる核酸構造の知見に関しては、細胞模倣環境で核酸の構造や熱安定性が試験管内と大きく変化することが見いだされた。このような知見は、合目的的にMTPSを設計するために極めて有用な知見になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従って、分子標的型光感受性物質を開発することに成功し、その効果を試験管内と細胞内で確認することを達成した。試験管内での研究は、2017年度に計画していたものであり、この点に関しては、当初の計画以上の成果を得ているといえる。また、開発した化合物が、標的分子に結合するに伴って蛍光を発光することや、標的となる核酸の細胞内での構造安定性に関る知見など、当初の計画にはない展開が広がりつつある。しかし、論文の採択が2016年度には間に合わなかったことを鑑みて、全体的にはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内外での研究を遂行し、論文投稿を急ぐ予定である。同時に、新しい分子標的型光感受性物質の開発も試みる予定である。また、試験管と細胞で得られた成果を動物に展開することや、PDTによる遺伝子発現プロファイルの網羅的解析にも取り組みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
試験管内や細胞内での実験が当初の予定よりも大きく進展し、物品費を期首予定よりも多く使用した。一方、当初必要と見込んでいた謝金やその他の経費を使用する必要性が低かった。これらの結果、10740円を使用しない状況となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に使用する金額は10740円であることから、当初の研究計画に加えて、論文投稿や学会発表などによる成果報告に関して使用することで執行したいと考えている。
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