2016 Fiscal Year Research-status Report
抗体のミスフォールディング情報を出力する交差反応性分子ライブラリの創製
Project/Area Number |
16K14043
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
冨田 峻介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (50726817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木 賢太郎 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90334797)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗体 / バイオセンサー / 酸化グラフェン / DNA / 機械学習 / 高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に抗体は不安定であるため、製造から投薬までの各過程において様々な経路でミスフォールディングして劣化しやすい。したがって、抗体製品の安定な生産法を確立するには、サンプルに含まれる抗体の状態評価が鍵となる。本研究では、抗体のミスフォールディング情報を出力した“フィンガープリント”を利用することで、一回のアッセイで簡易にミスフォールド抗体組成を同定できるセンシング法の開発を目指す。本年度はミスフォールド抗体のフィンガープリンティングに適した分子群の設計を試みた。酵素や合成高分子など様々な材料のスクリーニングを行った結果、3'末端に蛍光団を修飾した一本鎖DNA(ssDNA-TAMRAs)とナノサイズの酸化グラフェン(nGO)からなる複合体群が有効であることを見出した。ssDNA-TAMRAsとnGOを混合すると、複合体を形成してssDNA由来の蛍光が消光する。異なる配列を有する6種類のssDNA-TAMRAsとnGOからなる複合体群を、それぞれマイクロプレート中でアレイ状に配置したセンサーを準備し、ここに天然状態・変性状態・凝集状態のヒト由来抗体(イムノグロブリンG およびオマリズマブ)を加えた。その結果、各種抗体とssDNA-TAMRAs/nGO複合体間の競合的な相互作用の強弱を反映した蛍光フィンガープリントが得られた。線形判別分析によって、得られたフィンガープリントを解析したところ、抗体の種類に関わらず各状態を高精度に識別することができた。また、本センシング法は、3つの状態の抗体混合物の識別にも利用できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な材料のスクリーニングを行った結果、初年度の目標とした、ミスフォールド抗体の検出に適した材料の開発を達成した。この材料を利用することで、i) 各種ミスフォールド状態に固有のフィンガープリントの出力、そして、ii) 異なるミスフォールド状態の抗体が混合した溶液の識別が可能なことを見出した。以上の成果から、当初の計画通りに研究が進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] センシング系の改良:初年度に開発したssDNA-TAMRAs/nGO複合体群は、抗体に対する応答が弱く、感度が不十分である。そこで、より高感度かつ識別能の高いセンシング系を構築するために、nGOをベースにして更に適した材料の開発を試みる。同時に、異種蛍光団の併用によるマルチチャネル化や環境応答性高分子を利用するセンシング系の簡易化なども検討する。 [2] ミスフォールド抗体組成の定量:構築したセンシング系を用いることで、実際の製造過程で抗体が受ける化学・物理刺激によって形成したミスフォールド抗体の識別が可能かどうかを調べる。さらに、各ミスフォールド抗体を様々な割合で混合したサンプルの組成の定量を試みる。
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Causes of Carryover |
材料のスクリーニングが効率よく進み、計画当初に比べて試薬類の種類および使用量が少なかったため、繰り越しを計上した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は多様な抗体の使用を検討しており、必要な試薬類の購入に今年度の繰越額を充てる予定である。
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