2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14047
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
青木 隆史 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 准教授 (80231760)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水処理膜 / ファウリング / 防汚効果 / ポリマー濃厚層 / コアセルベート / N,N-dimethylacrylamide / n-butyl methacrylate |
Outline of Annual Research Achievements |
水を浄化するための水処理を行うにあたり、水処理膜の表面上で起こるファウリング現象をいかに抑えるかが課題の一つとして残り続けている。新しいコンセプトの基に分子設計したポリマー表面修飾剤の防汚効果について、本研究課題では検討している。 N,N-dimethylacrylamide (DMAAm) とn-butyl methacrylate (BMA) とからなるコポリマーが、ある特定の組成範囲内では、水を含んだままポリマー濃厚溶液となりバルク水から相分離する(コアセルベート)。そして、この水とポリマーから構成されるポリマー濃厚溶液が、血液中の血小板の接着を抑制することを明らかにしており、当該研究課題では、ポリマー濃厚層を水処理膜表面に化学修飾して、その表面上での微生物の接着や有機酸などの低分子化合物の吸着の効果を調べるために、ポリマー修飾方法について検討した。 すでに市場で出回っている水処理膜への表面修飾を念頭に置き、DMAAmとBMAとのコポリマーを水処理膜表面へ化学修飾するのではなく、水処理膜表面上で、これらのモノマーを重合して当該コポリマーを均質に修飾することを目的としている。そこで、フィルターや中空糸への修飾の前に、まずはフィルム形状の母材表面への化学修飾を検討した。水に難溶なラジカル重合開始剤である過酸化ベンゾイルなどをアセトンに溶解し、これを母材表面にコーティングしたのち、 DMAAmとBMAの混合水溶液を滴下させて重合反応を行なった。反応終了後、エタノールで未反応の化合物を洗い出し、乾燥後、接触角などの表面分析を行なった。しかし、表面への修飾状態が不均一であったことから、重合開始剤や母材表面への前処理などを検討し、母材表面上で均一に重合し、均質なポリマー膜を化学修飾する条件を見出すことが、現時点での課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、水に難溶性のラジカル重合開始剤を母材表面上に塗布し、DMAAmとBMAの混合水溶液を滴下して重合を行なったが、表面への修飾状態が不均一であった。このことは、(1)重合開始剤のコーティングが効果的に行えていなかった。(2)母材へのラジカル発生効率が十分ではなかった。(3)重合溶媒である水にBMAの溶解性が低い。などの理由が考えられる。特に、母材へのラジカルの発生に関して不十分であると考えられ、さらに他のラジカル重合開始剤の探索を行う必要がある。重合反応時に、ラジカル重合開始剤は溶媒に溶解せず、母材表面に安定にコーティングされている必要があり、重合溶媒に不溶であることが条件となる。DMAAmが水溶性であること、BMAは0.6g/100mLほど水に溶解することから、重合溶媒に水を選んでいる。これらの組み合わせに対しても再考する必要が出てくれば検討するが、重合溶媒に水を使用することに対しては変更せず、他の条件の検討をまずは行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
母材へのラジカル発生効率が十分ではなかったことが、コポリマーの表面への修飾状態が不均一であったことの一番の要因であると考え、重合開始剤の選定と、その重合開始剤を母材表面にコーティングする際の溶媒の種類や濃度などの条件検討を行う。重合開始剤の名称については、特にここではあえて記さないが、開始剤と母材との関係、そして、母材そのもののラジカル発生効率なども考慮し、条件検討を行なっていく。 均一なコーティングが行えるようになった場合には、計画通りに実験を進め、接触角、X線光電子分光分析(XPS)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)などの表面分析、そして微生物の接着性などを調べていく。
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Causes of Carryover |
コポリマーを母材表面上で重合し、母材表面への化学修飾を行なった後の微生物や有機酸などの化合物の購入を次年度に充てるために、次年度での使用額として発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2018年度においては、母材への適切な修飾条件を見出し、微生物の接着実験や有機酸の吸着実験などを行う予定であり、上記理由で生じた使用額を執行する予定である。
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Research Products
(4 results)