2016 Fiscal Year Research-status Report
分子スイッチ能を有する毒素を利用した新規なセシウムイオン捕捉剤の作製
Project/Area Number |
16K14048
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
北所 健悟 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (60283587)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 毒素 / セシウム結合タンパク質 / X線構造解析 / XAFS |
Outline of Annual Research Achievements |
放射性セシウムの効率的な除去は急務な課題である。タンパク質がセシウムイオンと結合する性質を利用した除去剤の開発例は未だにない。申請者が構造解析したウエルシュ菌毒素(CPE)の構造は、3量体の中心に2つの金属イオン結合部位を持つ。立体構造解明により、3量体の分子中央に負の電荷をもつグルタミン酸が3個ずつ集まってできたグルタミン酸クラスターが2つあることを見出した。このクラスターに金属イオンがそれぞれ配位することがわかった。本研究では、この毒素の特徴を利用して、セシウムイオンを捕捉する分子ピンセットの作製を目的とする。 このためウエルシュ菌毒素とセシウムイオンの結合様式を、X線構造解析並びにX線吸収微細構造(XAFS)の手法を用いて解明する。更にこの毒素タンパク質にアミノ酸変異を導入することで、セシウムを選択的に取り込む分子ピンセットを作製する。 今年度はウエルシュ菌毒素とセシウムイオン複合体のX線構造解析に成功した。またX線吸収微細構造(XAFS)の手法を用いて、セシウムの吸収端である0.35オングストローム付近でのXAFSを測定した。測定の結果から、セシウム結合能の高い変異体を遺伝子組換えの手法を用いて作成し、精製結晶化を行った。CPEが3量体の中心に有する金属結合部位の2つのグルタミン酸をアスパラギン酸に変異させた2種類の変異体についても大量培養並びに精製を行い、2種類の変異体結晶をそれぞれ作成した。更にセシウムをソーキングした結晶をSPring-8のBL41XU並びにBL44XUで構造決定を行った。その結果、BL41XUの高エネルギーモードで測定したXAFSにセシウムの特性吸収を示すピークが確認され、高いセシウム結合能を持ったタンパク質を創製することに成功した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では変異体の作成は平成30年度以降の予定であったが、セシウムとCPEのX線構造解析からのXAFS測定がスムーズに行えたため、その結果を検討し、変異体の作成に着手した。この変異体の作成もスムーズに行うことができたため、年に二回しかない秋季の高エネルギーモードでのデータ測定に間に合うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はセシウムと毒素タンパク質の詳細の結合状態を検討し、構造の精密化を行う予定である。具体的にはどの程度のソーキング時間および濃度でセシウムが結合するのか、パラメータ条件(濃度、時間)を変更させてより深く結合様式をリファインしていく予定である。
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