2017 Fiscal Year Research-status Report
超原子価状態の活用による水素含有率の高い水素貯蔵材料の開発
Project/Area Number |
16K14053
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 直和 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00302810)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | リン / ホウ素 / 水素貯蔵 / 結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に、リン原子上にオルト-N-メチルアミノフェノール由来の二座配位子をもつ5配位リン-4配位ホウ素間の結合をもつ化合物を合成し、その結晶構造や溶液中の構造を明らかにした。今年度は、合成したリン-ホウ素結合化合物の理論計算をおこなって最適化構造を求め、X線結晶構造解析の結果とよく一致していることを明らかにした。最適化構造をもとに電荷分布と分子軌道の様子を調べたところ、リン原子は正に帯電し、ホウ素原子は負に帯電した分極したリン-ホウ素結合をもつことが分かった。また、HOMOはリン原子上の二座配位子部分のπ軌道に主として局在化しており、HOMO-1は配位子部分のπ軌道とリン-ホウ素結合のσ軌道に局在化していることがわかった。一方、LUMOはホウ素原子上の配位子部分に主として局在化していることがわかった。この結果を踏まえて、電気化学的挙動を調べるためにサイクリックボルタンメトリーを測定したところ、不可逆な酸化波が観測された。酸化電位は同じ二座配位子を二組もつヒドロホスホランの場合と比べて低電位側に観測された。さらに掃引すると不可逆な第二酸化波も観測された。一方、還元側については還元波は観測されなかった。理論計算の結果とあわせて考えると、一段階目の酸化はリン原子上の二座配位子部分の酸化が起こったものと推定される。このリン-ホウ素結合化合物はアニオン種であることから、中性のヒドロホスホランよりも酸化が起こりやすくなったと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の実施計画と照らし合わせると、当初予定していた理論計算や電気化学的測定を行い、化合物の特性を明らかにすることができた。また、前年度に前倒しで行ったX線結晶構造解析の結果と比較することもできた。実験室の火災で合成関係の実験を行えなかった時期があったことを考慮すると、計画はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の前半は実験室の火災の影響で実験に支障を来したが、今後はこれまでに合成したリン-ホウ素結合化合物の配位子を水素原子へ変換することと、その後に水素を発生する条件の検討を行う。その結果、リン-ホウ素結合化合物の水素貯蔵材料としての可能性を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
火災により実験室内部が全焼し、計画していた実験を行えない時期があった。その期間に予定していた実験の実施時期が後にずれ込むことになり、薬品の購入も次年度にずれ込むこととなった。次年度には物品費として当初計画していた実験のための試薬を購入する計画である。
|