2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14078
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
木村 睦 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60273075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セルロース / イオン性液体 / 繊維 / 中空糸 / ゲル / 多孔性 / 透水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではイオン液体を用いた構造初期化と溶媒置換による成形手法を開発し、セルロースの持つ特異的な機能を持つ高強度ゲル材料の創成に関する検討を行った。減圧下加熱攪拌することによりイオン液体中で完全にセルロースが溶解した溶液を調製することができた。この溶液を型に入れメタノール蒸気と水で溶媒置換することにより、水分含量95%以上のセルロースハイドロゲルを得た。得られたセルロースハイドロゲルを乾燥しFT-IR測定を行ったところ、イオン液体由来のピークは見られず溶媒交換によりゲル中のイオン液体を完全に除去できた。得られたセルロースハイドロゲルの圧縮強度試験を行ったところ、化学架橋を持たない物理ゲルとしては非常に高い圧縮強度(5.1MPa)を示した。さらに、得られたセルロースハイドロゲルは優れた耐環境性を示した。次に、紡糸および延伸によるセルロース間の結晶化を試みた。未延伸繊維の滑らかな側面形状は、スキン層形成がなくゲル状態を経由して繊維化がおこっていることを示唆している。さらに、このセルロースゲル繊維は水中で結び目を作ることができた。ゲル繊維と湿式紡糸および凝固浴内での液中延伸により最大引っ張り強度 4 cN/dtexの高強度セルロース繊維を得ることができた。この強度は高強度レーヨンであるリヨセルとほぼ同等であり、ヤング率はリヨセルよりも高い。溶媒置換による均一な三次元網目構造形成と延伸による配向結晶化によって、セルロース繊維の強度が大幅に向上した。さらに、セルロースイオン液体中に両親媒性高分子を混合し、スポンジ状のセルロースゲルの調製を試みた。FE-SEM像に見られるように内部に球状の空間を持つセルローススポンジを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルロースの構造初期化によって、水を含むゲル・繊維・中空糸・多孔性ゲルへの成型加工性が可能となった。機械的強度も高く、網目構造の制御と化学的修飾によって様々な機能性材料への展開が可能であることを見出すことができたことから、概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の成果を元に、水処理膜等への展開を研究期間内に進める。
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