2016 Fiscal Year Research-status Report
モデルポリアルキルスチレン類を利用した分子構造と粘弾性パラメータの相関解析
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16K14079
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高野 敦志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00236241)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリアルキルスチレン / ガラス転移温度 / 粘弾性 / パッキング長 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は一連のポリ(4-n-アルキルスチレン)を精密合成するため、炭素数n=1、2、3、4、6、8の6種類の4-n-アルキルスチレンモノマーを合成し、さらにそれらのモノマーをリビングアニオン重合法により重合し、広い分子量範囲にわたる分子量分布の狭いモデル高分子試料をそれぞれ4試料以上、合計33試料を調製した。合成された試料の分子量、ならびに分子量分布は、多角度光散乱(MALS)、およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、いずれのシリーズ試料とも広い分子量範囲(5,000≦Mw≦400,000程度)にわたり、狭い分子量分布(Mw/Mn≦1.1)を有する試料群が調製されたことを確認した。 得られた試料群を利用して、まずはガラス転移温度(Tg)測定に着手した。その結果、いずれの試料とも重合度の低い領域ではTgは低く、重合度の増加に伴い、Tgは増加するが、重合度がおよそ300程度になると、一定のTgに達することが分かった。また、n=2~8の試料群で得られたTgの飽和値は、以前に報告された値に比べて20℃以上も高いことが明らかとなった。以前の研究では屈折率の温度依存性からTgを求めており、そのときの冷却速度は約2K/minである。ガラス転移は緩和現象であることから測定手法の違いにより値に差が見られたと考えられる。また以前の研究ではTgの分子量依存性がみられる分子量領域での試料を使用していた可能性もあると考えている。 さらに、全ての試料を用いて、動的粘弾性(周波数分散)測定を行い、貯蔵弾性率G’、および損失弾性率G”の合成曲線を作成した。合成曲線は測定領域内で滑らかに重なっており、温度時間換算側が成立していることが分かり、また、高分子量で十分な絡み合いを持つ高分子試料の測定結果からゴム状平坦領域は約3桁の広い周波数領域で存在していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭素数n=1、2、3、4、6、8の6種類の4-n-アルキルスチレンモノマーを合成し、さらにそれらのモノマーをリビングアニオン重合法を用いて重合することにより、本研究で使用される広い分子量範囲にわたる分子量分布の狭い一連のポリ(4-n-アルキルスチレン)試料をそれぞれ4試料以上、合計33試料、ほぼ設計通り調製することができた。また、それらのガラス転移温度(Tg)測定を行うことにより、Tgの分子量(重合度)依存性を明らかにすることができた。今後、粘弾性測定データと合わせ、分子構造と粘弾性パラメータの相関を議論する目途がついた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られたガラス転移温度(Tg)測定結果を参考にしながら、①各試料の動的粘弾性測定を行う、②各試料の粘弾性測定温度範囲の密度測定を行う、③溶液中における非摂動鎖の拡がりを測定することにより、各試料のセグメント長を求める。そして、①~③の粘弾性データとを用いて、パッキング長と絡み合い分子量の普遍的スケーリング関係の妥当性などを議論する。
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