2016 Fiscal Year Research-status Report
コレステリック液晶との複合化による温度応答性の表面凹凸をもつゴムの創製
Project/Area Number |
16K14080
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
浦山 健治 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (20263147)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶エラストマー / 液晶 / ゴム / エラストマー |
Outline of Annual Research Achievements |
コレステリック液晶のらせん配向軸が膜面の一方向にある液晶エラストマー膜を作製した。反応性液晶モノマーとらせん配向を誘起するキラル剤,および架橋剤の混合物を,垂直配向を誘起するラビングされた膜が表面に塗布された基板から成るセルに封入し,所望の液晶配向を得た。らせんピッチはキラル剤の量で100μm程度になるように調整した。セルに光を照射し重合を行うことで厚さ30μm程度の液晶エラストマー膜を得た。温度変化による膜のマクロ変形を観察するとともに,表面凹凸および局所複屈折を測定した。液晶相では加熱によってらせん軸方向の長さが大きくなり,それに伴って他の二方向が収縮する一軸変形が起きることがわかった。伸縮ひずみの大きさは10%程度であった。AFM測定によって得られた表面プロファイルは,らせんピッチに対応した周期的な凹凸を示し,凹凸の大きさは1μm程度であった。温度変化を与えると,表面凹凸の節部の位置は同じままで腹部の振幅が変化し,定常波のように表面凹凸が変化することがわかった。さらに,顕微分光により局所複屈折を測定したところ,複屈折が表面凹凸の腹部で最小,節部で最大となるように周期的に変化していることがわかった。温度変化を与えると,複屈折の局所分布は,分布の形は保ったまま,複屈折の値が増減した。これらの結果より,コレステリック液晶エラストマー膜は,らせん配向の局所配向分布に対応した熱変形を生じ,振幅が温度によって定常波のように変化する周期的な表面凹凸膜として挙動することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時のアイデアに沿った試料を合成することができ,物性のキャラクタリゼーションも多角的に行い,元のコンセプトをほぼ実証することができた。その成果を原著論文として発表することができた(Nagaiら,Macromolecules, 2016)。
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Strategy for Future Research Activity |
局所複屈折の値を解析すると,得られている膜のらせん配向は垂直配向部分が欠落しており,かなり乱れていることが明らかになった。これは,らせんピッチの方が膜厚よりも大きいという拘束条件によるところが大きいと考えている。今後は,らせんピッチの方が膜厚よりも小さい条件で液晶エラストマー膜を作製したい。この条件ではらせん配向が空間的拘束をうけないため,整ったらせん配向が形成することが期待される。このような液晶エラストマー膜に対して,同様の解析を行うことにより,表面凹凸の温度応答挙動をこれまでに得られた結果と比較していきたい。
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Causes of Carryover |
当初計画では,試料作製に必要な反応性キラル液晶モノマーの合成に必要な高価な原料(1グラムで25万円程度)を計上していた。このような高価なモノマーを予備実験で浪費することを避けるため,予備実験では代替の安価な原料を用いることとし,研究を進めた。本年度は,当初計画の高価な原料を用いることなく研究を進めたため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は当初計画にあるとおりの純度の高い高価な原料を用いた研究を行う。代替の安価な原料は純度が低いため,最終生成物の構造はかなり不均一であり,定量的な研究には適していない。測定手法などは本年度で確立したため,次年度は当初計画どおりの高純度の原料を用いて試料を作製し,物性測定に供する。
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