2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14087
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 儀宏 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50442728)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ガラス / ラマン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,非接触・顕微測定が可能である非弾性光散乱により,光波制御デバイスや携帯端末において重要な材料部材「ガラス」の力学/強度評価を非破壊・短時間で行うための評価プロセス開発を目指すものである.特に,物質の結合状態を反映するラマン散乱に着目し,本研究を深化することで,多成分系ガラスの本質(緩和・不均一性)の理解はもとより,ガラス製造分野への利用・応用が強く期待される.また,顕微システム/マッピングを駆使した「不均一性の可視化」を実現する基礎技術の確立を試みる.以下に得られた主な成果を記す.
1.強化ガラスにおける構造緩和と1090 cm-1バンドのシフトとの相関を発見:現行のスマートフォンで使用されているガラスパネルの強化前後におけるラマン散乱測定を実施した結果,SiO4四面体の振動に関与するラマンピークが強化処理によって高波数へシフトすることを見出した.この現象を多成分系ケイ酸塩ガラスの構造モデルに基づき定性的に説明し,強化処理でガラスネットワーク中へ導入された大きなアルカリイオン種の置換(Na+→K+)が,Si-O-Si結合角の増加をもたらしたためと結論づけた.
2.ラマンマッピングによる強化処理領域の可視化の基礎原理を確立した:強化ガラスへ赤外レーザーを照射することで構造緩和を引き起こし,強化前の状況を作り出した.その後,1090 cm-1付近のラマンバンドのマッピング測定を行った結果,応力存在(強化)領域と構造緩和(未強化)領域に対応するバンドのシフトを観測し,マッピングによる強化/未強化領域の可視化に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強化ガラスにおける応力発生と関与するラマンバンドの振る舞いを明らかにしたこと,さらにそれを利用して強化/未強化領域に相当する応力マッピングに成功したことから,比較的順調な進捗と判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
応力下での構造と弾性的性質を理解するために,ガラスへの応力付加システムを構築し微小領域の圧縮・引っ張り過程におけるガラスのラマン領域のその場観測を試みる.また,高強度・応力存在下において,低エネルギー振動であるボソンピークや準弾性領域のスペクトル変化も観察したい.
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Research Products
(4 results)