2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘリウムイオン顕微鏡による全固体電池の構造/充放電特性オペランド計測法の開発
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16K14104
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
酒井 智香子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノ材料科学環境拠点, NIMSポスドク研究員 (90580407)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘリウムイオン顕微鏡 / 電位分布計測 / 電圧印加 / 全固体リチウムイオン二次電池 / 積層型セラミックコンデンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、新しいナノスケール電位分布計測技術の開発を目的とし、高空間分解能(サブナノメートル)を有するヘリウムイオン顕微鏡(HIM)を用い、全固体リチウムイオン電池を積層型セラミックコンデンサ(MLCC)の両端電極に接続し、電圧印加を行ったMLCC断面からの二次電子(SE)放出を検出し、アクティブ電圧コントラスト画像化を行った。電位を定量的に評価できるケルビンプローブフォース顕微鏡測定からの接触電位差画像化と組み合わせ、新しい電位分布計測手法の開発を行うことができた。この研究成果を論文化した[C. Sakai et al., Appl. Phys. Lett. 109 (2016) 051603.]。 次に、HIM装置の外から試料に任意の電圧を印加可能にするため、高真空装置内で操作できる高真空特性評価用電圧導入端子挿入機構をHIM装置に組み込んだ。機構導入により、HIM装置の外からHIM装置のメインチャンバーに導入された試料に電圧印加を行うことが可能になった。 上記に記載した様に、HIMを用いたMLCCの電位分布計測に成功しているため、機構の性能評価にMLCCを用いた。切断後、機械研磨により平滑平面を得たMLCCの両端電極に0.5 Vから5 Vまで0.5 Vステップで電圧を印加し、MLCC断面のSE像を取得した。印加電圧が1 V以下の時、SE像に電位を反映したアクティブ電圧コントラストが観察できた。 これらの研究成果を2017年2月16日開催 物質・材料研究機構 第93回先端計測オープンセミナー(依頼講演)にて発表した。この他にも、国際会議2件、国内会議4件の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 高真空特性評価用電圧導入端子挿入機構の製作 まず、トランスファーロッド、チルトジョイント、x, y, z軸機構と、トランスファーロッドの先端の2つのプローブから成る高真空特性評価用電圧導入端子挿入機構を設計した。製作業者に加工依頼後、出来上がった部品を組み立て、HIM装置に組み込んだ。試料ホルダーステージは、外側の2枚のステンレス板と中心に位置する直径30 mmの円形のステンレス板部分から成る。トランスファーロッドの先端に付けられた2つのプローブを、試料ホルダーステージのお互いに絶縁されている外側の2枚の板にそれぞれ接触させる。この状態で、電圧はチャンバーの外から、機構の2つのプローブ、試料ホルダーステージの外側の2枚のステンレス板、試料ホルダーステージの中心に位置する直径30 mmの円形のステンレス板部分に設置された試料ホルダーを通って、試料に印加される。チャンバーの外から、試料に任意の電圧を印加しながら、HIM観察ができるシステムを立ち上げた。 (2) 高真空特性評価用電圧導入端子挿入機構の性能評価 高真空特性評価用電圧導入端子挿入機構を使用し、高真空中に設置したMLCCの外部電極に電圧を印加(0.5 Vから5 Vの間で0.5 V毎)し、MLCC断面のHIM観察を行った。誘電体領域において、印加電圧が1 Vもしくはそれ以下の際、グレースケール値は接地した内部電極から、正にバイアスされた内部電極にかけて直線的に減少し電位分布を反映した像が得られた。印加電圧が1 V以下の時、SE像に電位を反映したアクティブ電圧コントラストが観察できた。1.5 V以上では歪みが現れ始めた。機構を組み込み、電圧を0.5 Vずつ増加させながらSE像を観察したことにより、上記の現象を観察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ペロブスカイト太陽電池のp-i-n接合のHIM観察 ケルビンプローブフォース顕微鏡法により、ペロブスカイト太陽電池のp-i-n接合のポテンシャルは既に多くのグループにより測定されてる。そのため、ナノスケールでのポテンシャル計測がHIMを用いて可能かを評価するため、まず、ペロブスカイト太陽電池に作製した機構を使用し、電圧を印加しながらp-i-n接合のHIM観察を行う。HIMを用いると、高空間分解能観察に加え、深い焦点深度を必要とする電位分布や局所的な表面構造や組成の違いの観察が可能である。この特徴を活かし、ペロブスカイト太陽電池の断面観察を行う。 (2) 全固体リチウムイオン二次電池(全固体LIB)の構造と充放電特性測定のオペランド計測 性能評価を終えた機構を用いて、全固体LIBの充放電特性測定を行う。この際、同時に、充放電時の電極、固体電解質、負極と固体電解質の界面付近及び正極と固体電解質の界面付近のナノスケール構造観察を、HIMを用いて行い、リチウム(Li)イオン濃度の分布を把握する。HIM-SEイメージング法を活かし、全固体LIBのLiイオンの輸送プロセスにおける移動度の不均一性の可視化を目指す。実際の電池動作環境下での測定を行うため、ヒーターの取り付けを行う。平成28年度購入済み温度コントローラー(レイクショア製,335型)を用いて温度制御を行う。研究成果をもとに、薄膜創製プロセスを改良し、性能の良い全固体電池の作製を行う。
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Research Products
(7 results)