2016 Fiscal Year Research-status Report
激甚型高温酸化利用経年強化傾斜機能遮熱コーティング
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16K14109
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 和洋 東北大学, 工学研究科, 教授 (50312616)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遮熱コーティング / 高温酸化 / ボンドコート / 熱成長酸化物 / セリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,遮熱コーティング(TBC)の高温長時間利用によるはく離を抑制する目的で,ボンドコート材料へ活性なセリウム(Ce)を微量添加し,激甚型高温酸化を積極的に生成・成長させることで耐はく離性の向上を試みた.Ce添加により,TBC/ボンドコート界面からボンドコート側へ生成・成長する熱影響酸化物を得ることに成功し,Ce添加量を増加させることにより,熱成長酸化物が厚くなることも明らかとなった.しかし,Ce添加ボンドコートを用いた場合,内方拡散する厚い熱成長酸化物(激甚型高温酸化物)は,TBCが使用されるガスタービン動翼の実機使用温度よりも高い1000℃以上の環境でないと生成しないことがわかった.そこで,実機使用温度においても激甚型高温酸化物が生成するよう金属CeからCe酸化物粒子に変更し,Ce酸化物添加ボンドコート材料を開発した.その結果,実機使用温度以下でも激甚型高温酸化物を生成させることに成功した.このCe酸化物添加ボンドコートを用いたTBCの界面はく離強度は,従来から使用されているボンドコート材を用いたTBCに比べ,顕著に高い界面強度を示し,4点曲げ試験によるひずみ量で3%以上の負荷においてもはく離が発生しなかった.これまでのTBCでは,ボンドコート材料の化学組成を最適化し,熱成長酸化物層を生成させないことが重要とされていたが,本研究の成果はそれとは全く異なる逆転の発生であり,激甚型高温酸化層に微細なき裂が入りやすいことによるはく離応力の緩和が効果的であることを世界で初めて示したものである. また,このCe酸化物添加ボンドコートとトッポコート材料であるイットリア安定化ジルコニアを混合させ,配合比を変化させた傾斜機能TBCの開発に着手しており,コールドスプレー法という粒子を固相のまま基材へ衝突させ成膜する手法を用いることで成膜の目処を得ている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の遮熱コーティング(TBC)においては,トップコートとボンドコートの界面に生成する熱成長酸化物が,ガスタービンの起動/停止により,熱応力を発生させるために界面はく離の主要因とされていた.そのため,熱成長酸化物を如何に生成させない材料を開発するかに注目が集まっていた.本研究では,逆転の発想により,熱成長酸化物を木の根状にボンドコート内部へ積極的に生成・成長させることにより,応力負荷による縦方向の微細き裂を多く発生させ,内部応力を緩和させることで耐はく離特性の飛躍的な向上に成功している.さらに,熱成長酸化物層を得るためには,Ce添加が効果的であることを示し,さらにCe酸化物粒子の添加がより酸化物生成に有効であることを明らかにした.その結果,ガスタービン実機使用温度以下であっても十分に厚い熱影響酸化物を生成させることに成功している.この厚い熱成長酸化物(激甚型高温酸化物)により,4点曲げ試験による界面強度評価において3%以上のひずみを負荷してもTBCのはく離は発生せず,信頼性の高いTBCの開発に成功している. また,このボンドコート材料とトップコート材料の混合比を徐々に変化させた傾斜機能TBCの開発を試み,コールドスプレー法による成膜の目処を得ている.これには,ボンドコート材料にナノオーダーのトップコート材料を造粒法で混合・製造した粉末を用いることが成膜性に有効であることも示した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,Ce酸化物量や粒径等の最適化を図る.さらには,Ce酸化物以外の添加元素によるボンドコート材料の開発を検討し,さらなる界面強度の向上を進めていく.特に,トップコート材料であるイットリア安定化ジルコニアとの相性を考え,ジルコニア添加ボンドコートあるいはイットリア添加ボンドコートに関してもその可能性を検討する. これからのボンドコート材料に関し,高温酸化挙動の評価と高温酸化後の界面強度評価を実施し,傾斜機能TBCへ応用していく. これと並行し,傾斜機能TBC成膜技術の確立を図り,高温環境下ではく離の生じないTBCの開発を行い,次世代ガスタービン動静翼への応用を視野に研究を推進していく.また,これまでに得られた成果は,国際会議や学術論文としてまとめ,世界に発信していく.
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