2016 Fiscal Year Research-status Report
パーセプトロン型原子間相互作用モデルを用いたマルチフィジックスシミュレータの開発
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16K14110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅野 宜崇 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (40314231)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノマイクロ材料力学 / 原子モデル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,パーセプトロン型ニューラルネットワークモデルを用いて,原子構造とポテンシャルエネルギーの関係を記述する原子間ポテンシャル関数を構築した.モデリング対象の材料は半導体材料である炭化珪素 (SiC) および複雑な構造・物性を有するホウ素 (B) とした. (1) 密度汎関数理論に基づいた第一原理計算によって,モデル構築のターゲットとなるリファレンスデータを集積した.最安定構造を中心として,変形や変位を与えた構造を多数作成し,構造とエネルギーの関係をリファレンスデータとして求めた.この際,非現実的な構造の安定性が過大評価される可能性を排除するため,それらの非現実的な構造についても一定量のリファレンスデータを作成した.また,SiCに対しては,モデルの汎用性を向上するためにSiおよびC単体の構造もリファレンスデータに含めた. (2) 上述のリファレンスデータを再現できるように,機械学習によってパーセプトロン型ニューラルネットワークモデルの重みづけパラメータを最適化した.この際,感覚層 (入力層) の素子数や連合層 (中間層) の層数および素子数など,パーセプトロンのネットワーク構造を複数検討した.リファレンスデータのうち一定量をランダムに抽出しテストデータセットとして用いることで,原子間ポテンシャルの環境非依存性 (トランスフェラビリティ) を確保した. (3) 構築されたパーセプトロン型原子間ポテンシャル関数を適用し,原子シミュレーションを実施した.シミュレーションの過程で非現実的な構造が生じた場合には,前工程に戻り,原子間ポテンシャルの再構築を行った.この際,原子シミュレーションにおいて生じた非現実的な構造に対して第一原理計算を実行し,それらの結果を新たにリファレンスデータに追加することでモデル改善の効率を向上した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定に従って、SiCやホウ素系材料を対象にリファレンスデータの獲得を行うとともにパーセプトロン型ニューラルネットワークモデルによるポテンシャル構築を進めてきた。機械学習アルゴリズムも導入し、ポテンシャルのトランスフェラビリティの確保を行うとともに作成したポテンシャルを用いたテスト計算も行うことができた。次年度の計画に移行するための準備も整っており、研究は当初の予定通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,まず前年度に作成したニューラルネットワーク型原子間ポテンシャル関数の安定性に関してより詳細な検討を行う.原子空孔,転位,粒界などの結晶欠陥を含む構造および相変態などに対してポテンシャル関数が問題なく機能することを確認する.問題がある場合には適宜モデルを再構築する. 次に上述の原子間ポテンシャル関数を拡張し,材料の様々な物性を再現することが可能なマルチフィジックスポテンシャルモデルの構築を推進する.具体的には,原子構造から電子状態密度を推定するためのニューラルネットワークモデルの構築を目指す.対象材料は引き続きSiCおよびBとする. (1) 第一原理計算によって原子構造ごとに電子状態密度を計算する.多様な構造に対して構造と電子状態密度の関係を集積し,機械学習のためのリファレンスデータとして利用する. (2) パーセプトロンを用いて,原子構造と電子状態密度の関係をモデリングする.電子状態密度は電子のエネルギーを変数とする一変数関数であるため,エネルギーごとに個別のパーセプトロンモデルを作成する.ここでは,離散的なエネルギー値に対してパーセプトロンを構成し,各パーセプトロンの出力を補間することで,電子状態密度の関数全体を再現するマルチフィジックスポテンシャルモデルが構築される. (3) 作成したマルチフィジックスポテンシャルを用いて対象の諸物性 (バンドギャップ等) を評価し,第一原理計算の結果と比較することで,物性が正しく再現されているかを検証する.精度が不充分である場合には,問題の生じた構造をリファレンスデータとして追加し,マルチフィジックスポテンシャルモデルの再構築を行う.
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