2016 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of conformation and bistability of a multi-jointed elastic loop structure and its applications
Project/Area Number |
16K14115
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 展 大阪大学, 工学研究科, 助教 (70550143)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多節環状弾性体 / 立体配座 / 双安定性 / 形態制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
離散的なねじり回転と連続的な曲げ変形が連成することで「線状物体のもつれ状態」を発現する多節環状弾性体の開発に従事した.研究成果の詳細を以下に記す. 本研究では,はじめに先行開発した多節環状弾性体の構成部品(関節部と弾性部)の高精度化および微細化を図った.関節部の造形は,研究室で所有している3Dプリンタの熱溶解積層方式から外注によるインクジェット方式に変更し,アクリル樹脂による約1/2の小型化を行った.また積層ピッチの改善に伴い,摺動面の高精度化によって低摩擦力のねじり回転も実現した.弾性部としては,3種類の形状(直筒型/くびれ型/蛇腹型)を採用し,前者2つの材料はシリコンゴムを,後者はテフロン(PFA)を用いた.なお,牽引試験用の貫通部材には低摩擦・高強度で耐摩耗性に優れた釣糸を使用し,関節部と弾性部の部品数はそれぞれ10点とした. 上記の構造システムにおいて牽引試験を行った結果,直筒型・くびれ型では関節部に回転が生じずに弾性部の変形のみに留まった.一方,蛇腹型では,弾性部の軸変形が進行した後,関節部の回転と弾性部の曲げの連成変形に分岐する所望の変形メカニズムが発現された.次に材料力学の基礎式を用いて,蛇腹型チューブの曲げ剛性に対する軸剛性の比が直筒型と比較して大きいことを示した.すなわち,関節部の回転を誘起させるためには,低曲げ剛性に加えて高ねじり剛性である弾性部の幾何形状が重要であることを明らかにした. 以上の知見に基づく多節環状弾性体を用いて,異なる部品数における牽引試験を実施することが可能となる.さらに画像処理解析による各関節部の回転量の推定から,多節環状弾性体の立体配座と変形分岐後の「もつれ状態」の定量的評価が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,研究計画調書に記載のとおり,先行開発した多節環状弾性体の構造模型のサイズの縮小化および高精度化に取り組み,関節部の造形に用いた3Dプリンタを熱溶解積層方式からインクジェット方式に変更することで1/2サイズの縮小化に成功した.さらに16μmの積層ピッチを考慮した設計の見直しによってヒンジ回転部の摩擦力低減も実現した.弾性部の設計についても関節部の変更に伴い改善を図り,サイズを縮小化させるとともに直筒型/くびれ型/蛇腹型の異なる3種類の幾何形状を開発した.開発した構造体の牽引試験によって当初予定していなかった蛇腹形状の特徴的な力学特性が判明し,実際に材料力学に基づいて当該変形メカニズムに必要な弾性部の剛性条件を明らかにした.上記の知見は,弾性部の3種類の幾何形状を用いて当該構造の変形挙動を観察することによってはじめて得られたものであり,当該構造体の変形メカニズムを実験的な側面から考察するといった当初の研究目的が達成された.そして,本研究成果として国内特許出願を実施した.以上を理由に,本研究課題の進捗状況を"おおむね順調に進展している"と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,多節環状弾性体の牽引試験における定量的な計測手法の確立を目指して,画像処理解析から線状物体の中心線の3次元形状を推定するプログラムの開発に取り組む.そして,当該構造模型の数理モデルを定式化し,変形過程における各関節部のねじり回転量の抽出を図る.そして,計測した回転量の可視化によって当該構造模型の立体配座の解析を行い,もつれ状態および遷移状態の特定・分類に取り組む.併せて,先行研究の課題であった構造内部の摩擦による局所変形については,実験的観察からねじり回転の起点に関する考察を行い,初期不整量などの影響を検討する. 上記の計測手法の開発と並行して,研究計画調書に記載のとおり多節環状弾性体の物理モデルの構築に従事する.モデルの解析的な定式化が困難なことが判明次第,有限要素法などの数値解析を利用した手法に切り替える.そして,構築したモデルに表面エネルギーなどの項を追加することで,現時点で実験観察が困難である当該構造体の遷移状態や双安定性に関する振る舞いを考察する.
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Causes of Carryover |
研究計画調書で計上していた関節部の設計・開発費にあまり予算をかけることなく当該構造模型の縮小化・高精度化に成功したため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該助成金は,本研究成果によって判明した弾性部幾何形状に関する設計・開発費および画像処理解析の開発費に充当させる予定である.そして,より機能性の高い実験用構造模型の開発と計測評価に従事する.
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Research Products
(3 results)