2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14122
|
Research Institution | Tsuruoka National College of Technology |
Principal Investigator |
五十嵐 幸徳 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50193157)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 耐熱材料 / ケイ化物 / 材料設計 / 自己燃焼反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
Si3Zr5およびSi3Ti5を基にした新16H型シリサイドの材料設計を行った。まず、二元系の16H型シリサイドSi3Zr5とSi3Ti5におけるZrおよびTi原子と置換すると予想される元素を選択した。既存の二元系16H型シリサイドを構成する元素を、Pearson's Handbook,Pettiforの結晶構造マップ,二元系状態図などを参考にして選択した。次に、二元系16H型シリサイドにおける化学量論係数をSiが3でZrとTiを5とした場合、三元系では基本面AもしくはB,C面の金属原子を置換するよう、置換元素Mの化学量論係数xを2もしくは3とし、その結果ZrとTiの化学量論係数は5-xとなるように材料設計した。 材料設計した置換型新16H型シリサイドの試作と結晶構造解析を行った。原料元素の調整は、簡易的なグローブボックスを用いてアルゴンガス雰囲気中で元素粉末を材料設計にしたがって化学量論的に秤量し、アルゴンガス封入したポリエチレン製広口瓶にてボールミルを用いて混合し、本校所有のパルス通電焼結装置により自己燃焼反応を発生させ、焼結体を作製した。得られた試料表面を研磨し、X線回折による結晶構造解析を行い、相の同定から16H型シリサイドの生成を確認した。さらに、SEM,EDS,EBSPによって試料を観察し、生成された相の確認を行った。 生成された相を確認したところX線回折による結晶構造解析からは16H型シリサイドになる系、32U型シリサイドになる系、単一相にならない系、溶出する系などに分類された。SEMとEDSによる分析では、ほとんどの試料表面は自己燃焼反応時のガス放出によると思われら気孔が観察されたが、比較的偏析の少ない状況が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの所、ほぼ申請した計画通りの進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、置換メカニズムの解明を行う。平成28年度の研究において、16H型シリサイドになる系、32U型シリサイドになる系単一相にならない系、溶出する系などに分類され、原子置換できた元素とできなかった元素に分かれた。そこで、平成28年度に得られた結果を基にして新16H型シリサイドが得られた原子の置換メカニズムを材料設計にさかのぼって解明したい。また、結晶構造解析から原子間距離を計算し原子の結合状態を推測する。 次に、ち密体作製と硬度測定および破壊じん性値の算出を行う。16H型シリサイドを超耐熱材料として実用化するに当たって最大の問題は常温での低い延性である。16H型シリサイドの生成が確認できた試料に対し、原子置換の延性におよぼす効果を調査するため、本校所有のパルス通電焼結装置により焼結体を作製する。焼結体の作製は、パルス通電焼結装置で原料元素混合粉末から作製した焼結体は多孔質になってしまうことが多いため、本申請により購入するミキサーミルにて焼結体を粉砕後、再度パルス通電焼結装置でち密体に焼結する。そうした試料に対し、常温における硬度測定と、その際に発生するクラックから破壊じん性値を算出する。また、アルキメデス法による比重測定も行う。それらの結果から、既存の16H型シリサイドや他の材料と比較して試作試料が高破壊じん性を示す超耐熱材料として有望なものであるかを判断する。 ち密体作製は困難が予想され、試行錯誤を繰り返す恐れがある。そのため、十分な研究期間を与えて頂きたい。そのため平成30年度もち密体作製と硬度測定および破壊じん性値の算出を継続する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は材料設計した置換型新16H型シリサイドの試作と結晶構造解析を行ったが、試作した焼結体には自己燃焼反応に由来する気孔が多数存在する。置換型新16H型シリサイドの硬度測定および破壊じん性値の算出を行うためにはち密体を作製する必要があり、当初の予定ではミキサーミルにて焼結体を粉砕し、再度パルス通電焼結装置でち密体に焼結するとして申請した。 しかし、助成金を有効に使用することを念頭に効果的な粉砕方法を慎重に検討したところ、装置や媒体などの選択に多大な時間を要してしまい、年度末まで決定することができなかった。そのため、検討する時間をもう少し猶予をいただき、より効果的な方法を探求するため、当該年度の予算を次年度使用させて頂くことにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、ミキサーミルにて焼結体を粉砕し、効果的に粉砕する方法を検討する。粉砕の媒体は現状ではタングステンカーバイドを考えている。タングステンカーバイド製の粉砕器具は非常に高価であるため、予備実験を重ねながら決定したい。 次に、上記の方法でも粉砕が困難であった場合、原料元素混合粉末からのパルス通電焼結装置を用いた反応焼結によるシリサイドち密体作製を検討する。また、メカニカルアロイングからのシリサイド生成を検討し、その粉末をパルス通電焼結装置を用いて焼結する。そうして得られた、シリサイドのち密体の硬度測定および破壊じん性値の算出を行うことで既存の16H型シリサイドや他の材料と比較して試作試料が高破壊じん性を示す超耐熱材料として有望なものであるかを判断する。
|