2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K14122
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Research Institution | Tsuruoka National College of Technology |
Principal Investigator |
五十嵐 幸徳 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50193157)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 耐熱材料 / ケイ化物 / 材料設計 / 自己燃焼反応 / メカニカルアロイング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究は、置換メカニズム解明のためにEBSDによる結晶構造解析を行う予定で、まず、ち密体の作製方法の確立を図った。ち密体の作製は、当初、パルス通電焼結装置で原料元素混合粉末から作製した多孔質の焼結体を、ミキサーミルにて粉砕後、再度パルス通電焼結装置でち密体に焼結する予定であった。しかし、多孔質の焼結体は予想以上に硬く、粉砕作業には非常に時間がかかる上に回収量も少ないことが判明した。そのため、昇温速度を抑えた加熱による反応焼結によって化合物の焼結体を作製しようとした。しかし、十分なち密体を得ることはできず、多孔質のため正確な硬度測定を行うまでには至らなかった。 硬度測定ができるち密体を得るため、ミキサーミルを用いて原料元素混合粉末から自己燃焼反応を生じさせるメカニカルアロイングからのシリサイド生成を行い、その粉末をパルス通電焼結装置を用いて焼結した。焼結体はほぼち密な物が得られ、常温における硬度測定の結果、これまでの化合物と比べて硬度が低く、クラックの発生が確認できない試料が作製できた。クラックから破壊じん性値を算出することはできなかったが、高い破壊靱性を示すことが期待される。 焼結体をXRDによって解析したところ、回折図形の特徴からは16H型シリサイドのピーク形状と判断されるが、シャープなピーク形状ではないため現時点で詳細な同定には至っていない。EDSによる解析では原料元素の偏析が確認され、単一相ではない部分があることを示しており、シャープなピーク形状にはならない要因となっているものと考えられる。 以上により、ち密体の作製方法を確立でき、これまでの化合物よりも硬度の低い16H型シリサイドを作製できた可能性がある。今後はより精密な調査を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅延の理由として、想定した置換型の化合物が合成できなかったり、ち密体の作製にも想定以上に時間を要した。また解析に必要な走査型電子顕微鏡の不調により、試料の元素分析が随時行えない状況にある。走査型電子顕微鏡の点検修理に200万円を提示され、予算の確保しようとしたが、できなかった。 現在までのところ、ち密で硬度試験において亀裂の発生が確認できない試料が作製できた可能性があり、解析の途中であるため、残りの予算によって追加の実験を行い、目的をより精緻に達成したく補助事業期間の延長を願い、受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで得られたメカニカルアロイングからのシリサイド生成で得られた粉末を、より高温で焼結し、超耐熱材料としての可能性を調査する。まず、昨年度は早急に調査したち密体の解析をより精度を高めて行う。 置換メカニズムの解明のためにEBSDによる結晶構造解析行いたい。そして、これまで得られた結果を基にして新16H型シリサイドが得られた原子の置換メカニズムを材料設計にさかのぼって解明したい。これまでの研究では結晶構造が判明しなかったため、研磨方法の検討など、作製した試料の結晶構造が確認できるようにしたい。また、結晶構造解析から原子間距離を計算し原子の結合状態を推測する。さらには硬度測定および破壊じん性値の算出を行う。 メカニカルアロイングからのシリサイド生成では、合成した化合物が原料元素粉末の性状によってどの様ち密体の硬度に影響するか調査する。現時点では、これまでの化合物と比べて硬度が低く、クラックの発生が確認できない試料が作製でき、大きな進展が期待されるが、原料元素の偏析が確認され、単一相ではない部分があるために低い硬度を示している可能性もあるため、さらに研究の継続が必要である。
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Causes of Carryover |
焼結に使用するパルス通電焼結装置は老朽化しており、修理が必要な可能性もあったため、その使用を差し控えながら研究を遂行した。特に、解析に必要な走査型電子顕微鏡の不調により、試料の元素分析が随時行えない状況になった。走査型電子顕微鏡の点検修理には業者より200万円を提示され、その予算を確保しようとして使用を差し控えながら研究を遂行した。そのため残予算が生じた。 それでも年度終了前に、ち密で硬度試験において亀裂の発生が確認できない試料が作製できた可能性が確認された。これらの試料は精密な解析までには至らず、残りの予算によって追加の実験を行い、目的をより精緻に達成したく補助事業期間の延長を願い、受理された。 今年度は当初の研究目的を達成するため、パルス通電焼結装置の補修やその他の装置のメンテナンスを十分行いながら研究を遂行したい。主に パルス通電焼結装置の電極、真空ポンプ、流量計等の交換に使用する。そのため、残りの予算を次年度使用させて頂くことにした。
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