2016 Fiscal Year Research-status Report
走査型プローブ顕微鏡によるアコースティックエミッションの複合計測技術の開発
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16K14123
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤澤 悟 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 主任研究員 (20357908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間野 大樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 主任研究員 (40344212)
三宅 晃司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 研究グループ長 (30302392) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 摩擦力顕微鏡(FFM) / スキャナ圧電体 / アコースティック・エミッション(AE) / 融石英表面 / ダイヤモンド |
Outline of Annual Research Achievements |
摩擦力顕微鏡(frictional force microscope, 以下FFM)のスキャナ圧電体にアコースティック・エミッション(acoustic emission,以下「AE」)が作用することにより、圧電効果でAE波に起因する信号すなわちAE信号が発生して、走査信号に重畳されることを利用する。走査信号に重畳されるAE信号を電子フィルタ回路で走査信号をカットすれば、試料と摩擦力の相互作用とAEを同時に検出できる。本年度の研究において最適次数は二次と結論づけた。これ以上高いと回路自体のノイズが検出の障害となるからである。また、信号強度が市販センサーの1/100以下である問題もプリアンプで最大1万倍まで増幅が出来るところまで達成した。また同時に検出できる複数のAE信号を用いて確率共鳴によるノイズ低減の研究を行った。 実験的には、FFM探針はダイヤモンドで、カンチレバーはステンレス製である。先端曲率半径は約0.5μm、カンチレバーのバネ定数は230N/mである。試料は溶融石英ある。実験としては、探針・試料間に垂直に荷重をかけるナノインデンテーションである。これは、接触モードで測定する事が基本であるFFMの画像取得のための初期設定動作である。かけた荷重は最大110μNであった。 溶融石英表面に荷重をかけるとAE信号として単発のスパイク波形が現れた後に連続したスパイク波形が現れ続けた。これは表面の場所を変えて試験しても再現性がある波形の発生の様子であった。よって、スパイク状の単発の振幅の大きなAE波と連続したスパイク波形が現れることは、発生メカニズムに起因したものであると考えられる。本内容は学会で発表すると共に、国際論文誌に投稿して掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイパスフィルタの最適次数が二次と決定でき、アンプ倍率も100倍が最適と決定できた。結果として、市販のマクロなAEセンサと同等の性能を達成することが出来た。これで、アドオンでFFMをはじめとする走査型プローブ顕微鏡(SPM)にAE検出機能を付加することが出来る技術の基礎が出来上がった。他方で、研究の初期段階でノイズが問題になることが判明していたので、先行して確率共鳴によるノイズ低減の研究を行ったが、目標値に近づけてはいるが達成できていない。これは今後の研究で解決する。本年度は試料の選択として、破壊を起こしやすい脆性材料である溶融石英を選択した。本材料は情報インフラの高速化の中心的役割を果たす光情報通信のキーデバイスである分光器の材料であり、その高精度加工に繋がる微小破壊の研究は大変重要で価値の高い物である。溶融石英を用いたナノレベルの破壊実験を行い、破壊の二段階進展現象を見出した。本内容は学会で発表すると共に、国際論文誌に投稿して掲載された。次に、延性材料である金属でも最も工業的に用いられている材料の一つであるCuを用いた実験を行った。結果としては、表面数十ナノメートルの破壊では有意なAEは検出されなかった。これは延性により変形が破壊やクラックを防いだためにAEが起こらなかったと考えている。Cuでも破壊が起こるように一桁以上大きな深さの破壊が起こせるようなプローブを準備している。Cuを選択した理由としては、半導体チップ内部の配線でCuが使われており、それに対する機械的強度設計への一つの指針になり得る可能性があることである。一方で、半導体内部に使われているのと同等の厚さを同様のメッキとCMP研磨で作成した銅又は市販の半導体チップから配線を取りだして比較実験をする必要があり、現有の予算では実現出来ない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行った溶融石英での破壊現象におけるAEの研究を進める。溶融石英は情報インフラの高速化の中心的役割を果たす光情報通信のキーデバイスである分光器の材料である。よって、これを微細加工することによって分光器を高性能化することが出来るため、その加工に関わる分野に得られた結果や本手法をそれらの分野にもアピールしていく。研究の初期段階でAEの検出ノイズが問題になることが判明していたので、先行して確率共鳴によるノイズの低減研究を行ったが、目標値に近づけてはいるが達成できていない。これを打破するため、センサである圧電スキャナが感度がしきい値を持つように設定できるようにプリアンプの入力素子を変更する。確率共鳴はまだ発展途上の技法であるが、明らかにされていることも多く、確率共鳴の前提が、「センサの検出感度のしきい値がある」ことが必要であることなどが分かっており、確率共鳴によるノイズ低減の研究が進められている。プリアンプ入力素子を変更するとプリアンプの周波数特性が可能性があるため、それに対する対策調整が必要となると思われるが、調整自体でノイズは増えないので、時間さえかければ十分可能と思われる。また、本年度の実験からAEを発生させるための負荷荷重の範囲を広く取る必要があることが分かった。これに対しては、FFMの荷重をさらに大きくするためにバネ定数がさらに大きなFFM力センサー(マイクロカンチレバー)が必要となるため、それを設計・試作する。試作したFFM力センサを用いて、広い負荷荷重条件で、本年度の実験結果・条件よりさらに詳しく破壊現象をAEによって調べることを試みる。さらに、本年度用いた従来のFFM力センサではAEが検出できなかったまたは変形・破壊が起こせなかったCu等の金属材料におけるAEの検出を試みる。
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Causes of Carryover |
消耗品の額が予定した額からから148円ほど異なっていたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に試用する。
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