2016 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブの分子メッキによる導電性ナノワイヤの創製
Project/Area Number |
16K14130
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
末 信一朗 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (90206376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂元 博昭 福井大学, テニュアトラック推進本部, 講師 (70552454)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノファイバー / エレクトロスピニング / カーボンナノチューブ / 分子メッキ |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子材料は、ナノファイバー、フィルムと形状ごとに、材料を構成する分子の配向性が異なることが知られている。これまでに申請者は、エレクトロスピニング(電解紡糸)法によりナノファイバーを形成した際、その分子ドメインが長軸方向に沿って配列していることを明らかにした。 本申請課題では、ナノファイバー表面で長軸方向に分子ドメインが配列する機序解明、および、分子ドメインを制御した高機能ナノファイバーの創製手法の確立を目的とする。長軸配列した分子ドメインへカーボンナノチューブ(CNT)を修飾することで、CNTを表面に一軸配列させた導電性ナノワイヤを創製し、形状変化に伴い導電特性を制御可能な導電性ナノワイヤの創出を目指す。平成28年度は、ナノファイバー作製時に現れる分子配列現象の解明を行った。様々な条件でナノファイバーを作製し構造解析した結果、ナノファイバー作製時の牽引力により分子配向が高まることを確認した。さらに、牽引され分子配向が高まったナノファイバーへの分子吸着を評価したところ、疎水性相互作用が高まることによってナノファイバー表面への分子吸着が高まることを見出し、すでに論文投稿し、受理された。(Evaluation of protein adsorption onto a polyurethane nanofiber surface having different segment distributions, Yuko Morita, Gaku Koizumi, Hiroaki Sakamoto and Shin-ichiro Suye, Mater.l Chem. Phys., 187, 1-4 (2017))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、「ナノファイバー表面における分子ドメイン配列の機序解明」を目的に研究を行った。ナノファイバー材料として、ポリウレタンを用いた。ポリウレタンは、ソフトドメインとハードドメインと呼ばれる2種の分子ドメインから相分離構造を形成することが知られている。これまでにポリウレタンの相分離構造の内、剛直な分子ドメインであるハードドメインが、ナノファイバーとフィルム形状では配置が異なることをAFMにより明らかにしてきた。本年度は、この分子ドメイン配向がどのような要因により起きるかを検証した。ナノファイバーの分子ドメイン配置が変化する要因としては、ファイバーへの引張応力、ポリウレタン濃度、ナノファイバーの形状(太さ)が考えられる。エレクトロスピニングによる作成時のコレクターの回転速度、印加電圧、樹脂濃度を変化させた様々なナノファイバーを作製した。その結果、牽引力を高めるにつれて分子ドメインの並ぶ直線性が高まっていくことを明らかにした。したがって、分子ドメイン配列はナノファイバーへの牽引力が支配的な要因であることを明らかにした。 次に、本来タンパク質吸着を抑制するPUを、ナノファイバー形状にすることで、相分離構造の変化にともない、PUの表面特性が変化するのではないかと考えた。本研究では、PUナノファイバー表面へのタンパク質吸着挙動を評価した。PUナノファイバー表面へのタンパク質の吸着量は、表面電荷の異なるBSA・Lyzどちらも牽引され径が細くなるにつれて増加した。また、タンパク質を吸着させたPUナノファイバーを非イオン性界面活性剤で洗浄すると、吸着タンパク質が脱離した。以上の結果から、PUナノファイバーは分子配向が高まることで、表面の疎水性が高まり、本来タンパク質吸着を抑制するPUにタンパク質吸着特性が発現したと考えられる。以上の結果を、学術原著論文へ投稿し、受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、ナノファイバー作製時に分子配向が高まる要因について検証を行った。ナノファイバーへの牽引力が分子配向を決定する最も支配的な要因であることを明らかにし、さらに分子吸着特性が高まることを見出した。 平成29年度は、この知見を応用し、ナノファイバー表面に配列した分子ドメインへ分子修飾ができないか検証する。分子ドメインのサイズは20nmであることからカーボンナノチューブ、ナノ粒子といった機能性ナノ材料を選択的に修飾できることが期待される。 牽引力の異なるナノファイバーを作製し、カーボンナノチューブの吸着を行う。ナノファイバーの作製条件およびカーボンナノチューブの吸着条件を検討する。次に、作製したカーボンナノチューブ修飾ナノファイバーの形態観察、電気特性評価を行う予定である。
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