2017 Fiscal Year Research-status Report
原子構造が制御されたグラフェンを搭載した触媒工具による次世代半導体表面の創成
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16K14133
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
有馬 健太 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10324807)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グラフェン / 触媒 / 半導体表面 / 選択エッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体デバイスの信頼性は、デバイス構築前の半導体表面の平坦性によって決まっている。しかし、Si以外の半導体では、表面平坦化技術の開発は未だ端緒についたばかりである。これまでに、液相中での白金触媒を用いた独自の手法により、原子レベルで平坦なSiC表面やGe表面を形成する研究に従事してきた。しかし、この手法には、仕上げ表面に金属汚染が残留するという問題点があった。特に、金属汚染を除去するための強酸化剤が使用できない半導体材料の場合、この問題は致命的である。 そこで代表者は、炭素(C)の二次元ネットワーク構造であるグラフェンがPtと似た触媒作用を示すことに着目した。本研究の最終的な目的は、Cネットワーク内の原子構造が制御できるグラフェン触媒の合成プロセスを確立し、このグラフェン触媒を搭載した触媒工具を試作するための道筋を立てることにある。 本年度は、まず、遠心分離器によって選別・抽出したグラフェンシートをグラファイト基板上に散布した。そして、走査型プローブ顕微鏡を用いて、グラフェンシートの原子レベルでの構造を観察した。また、グラフェンシートの作製方法について再検討を行い、異種元素のドーピングに着目した。そして、オートクレーブを用いた水熱合成法を採用し、グラフェンネットワーク内に窒素原子をドーピングすることに成功した。 次に、得られたグラフェンシートを半導体表面上に散布し、エッチングレートに影響を与える実験パラメータを把握した。これにより、代表者が見出した”グラフェンアシスト型化学エッチング”の基礎特性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、グラフェンシートが溶液中で触媒的な機能を発現し、半導体表面を選択的にエッチングすることを確認し、その基礎特性を明らかにした。また、実用的な表面創成プロセスに展開するためには、エッチングレートの向上が不可欠であるという新たな課題を見出し、これを解決するための実験にも取り組んだ。そして、グラフェンシートへの異種元素のドーピングが、エッチングレートを向上する上で、一つの効果的な手法であることを明らかにした。以上により、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、グラフェンアシストエッチングの現象自体は把握できた。しかし、得られた結果は定性的に過ぎない。これを学問的に確固たるものとし、生産プロセスに展開するためには、各実験パラメータ(エッチング溶液の組成や温度、グラフェンシートの組成)がエッチング性能に与える影響を定量的に理解することが不可欠である。今後は、上記の観点から実験を進め、最終的に目指す、触媒工具を試作するための道筋を立てたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度、グラフェンシートが発現する触媒機能について調査する過程で、半導体表面のエッチング速度に影響を与える新たな実験パラメータの可能性を見出した。この結果に基づき、本事業の目的をより高いレベルで実現するために、追加実験が必要となった。これに充当するため、差額が発生した。
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Research Products
(7 results)