2017 Fiscal Year Research-status Report
摺動部品の信頼性向上を目的とした低環境負荷新規グリースの開発
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16K14139
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
七尾 英孝 岩手大学, 理工学部, 准教授 (50312509)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機修飾粘土グリース |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の目標は,潤滑試験において,粘土グリースの乏しい流動性のために生じると思われるグリースのスタベーションなしに試験を遂行できるようその条件出しをすることであった.結果としては条件出しは問題なくクリアし以下の結果を得た. 鋼材への水素侵入を確認するためのトレーサー(重水素化n-ヘキサデカン)が期待通りに作用するか粘土グリースの基油であるポリ-α-オレフィンに溶解して予備試験を行った.試験後の鋼材表面をTOF-SIMS分析したところ,摩擦面と非摩擦面の水素に対する重水素の割合が,摩擦面では非摩擦面の18から25倍になっていた.更に,表面をスパッタし,深さ約60 nmまでのデプスプロファイルを取得したが,その深さまで同等の重水素侵入が確認でき,外挿するとミクロンオーダーの深さまで重水素が侵入する可能性が示唆された.このことから摩擦面で鋼材外部からの水素侵入が起こることを確認でき,本トレーサー法での実験遂行に問題ないことが確認できた. 同様の試験条件で,粘土グリースに本トレーサー法を適用した潤滑試験を行った.トライボロジー特性として摩擦係数はポリ-α-オレフィン(グリースではなくオイル)の場合よりも低く安定しており,潤滑性が向上することがわかった.比較対象として汎用グリースである脂肪族ジウレアグリースに関しても同様の試験を行ったが,ほぼポリ-α-オレフィンの結果と変わらないものであった.水素(重水素)の侵入に関してはも粘土グリースの方が抑制しており,脂肪族ジウレアグリースの5分の1程度となっていた. 以上の結果より,本手法を用いて粘土グリースが脂肪族ジウレアグリースよりも外部から鋼材内部への水素侵入を抑制し,かつ潤滑性にも優れていることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は複数種の粘土グリースを調整し,まずはそれらの潤滑特性を確認する予定であったが,粘土の調達が計画通りに進まなかった.しかしながら一方で,手持ちの調製粘土グリースで潤滑試験を行い,実際に鋼材への水素侵入の確認,抑制を示唆する結果が得られたため,全体としては概ね目標に向けての進捗は順調と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今回用いた粘土は一種類であるため,当初目的としていた他種の粘土を用いたグリースを複数種もちいて系統的な実験を行い,粘土グリースによる鋼材への水素侵入メカニズムを明らかにする.
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Causes of Carryover |
当該年度に計画していた新規粘土の購入,および新規粘土グリース調製に必要な器具の購入がなかったため当該助成金が生じた.これは今年度必要な予算であるため順調に執行されるものと考えている.
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