2016 Fiscal Year Research-status Report
静電レンズアレイを用いたナノ・マイクロパターニングと神経細胞ネットワークへの応用
Project/Area Number |
16K14143
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 俊完 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40401517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 和弘 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (00220632)
嚴 祥仁 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (20551576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 静電気力 / ステンシルマスク |
Outline of Annual Research Achievements |
エレクトロスプレーデポジション(ESD)法とステンシルマスクを組み合わせた手法は,生体材料を広範囲かつ精密にマイクロパターニングすることができる.ESD法により電気的に噴霧された材料溶液は,空気中で瞬時に乾燥し,乾いた状態で基板に堆積するため,理論上は粒子直径である数十nmのパターンを形成可能である.しかし,ステンシルマスクにおいて,穴のナノ加工は難しく,また,粒子が詰まる可能性も高いため,ナノスケールまでの微細化には至っていない. したがって,本年度には,ESD法の帯電粒子を静電レンズのように集束することでステンシルマスクの穴よりも小さいパターンを形成可能な新たな手法を開発することを目的に,(1)有限要素法によるシミュレーションに仕様の確定と,(2)静電レンズ機構を有するステンシルマスクの製作を行なった. 有限要素法ソフトウェアであるCOMSOLを用いて,ステンシルマスクの穴まわりの電場に関するシミュレーションを行い,スプレー源を5.0kV,ステンシルマスクの下から一層目,三層目,五層目の電極にそれぞれ2.4,2.6,2.8kVを印加することで,ステンシルマスクの穴はは50μmに対して電気力線は基板上で約300nmの幅に集束されており,電気力線に沿って誘導されるESD法による粒子もこの範囲に堆積すると考えられる. このデバイスの製作方法として以下のプロセスを提案した.ガラスウェハに犠牲層となるPVAフィルムを貼る.その上に,別のステンシルマスクを用いてTiとCuをスパッタリングし電極の一層目(電極B)を作製する.次に,SU-8をスピンコートし,パターニングする.これを五層分繰り返す.最後に,ガラスウェハを脱イオン水中に浸すことでPVAフィルムを溶かしステンシルマスクを剥離する.このプロセスで製作したところ,歩留まり100%は得られなかったものの,実現可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,静電気力で帯電された微粒子の軌道を制御できるステンシルマスクの提案と製作を目的としている.MEMS技術はフォトリソグラフィを用いた露光・現像プロセスを基本とするため,比較的2次元に近い構造体の形成は得意であるが,複雑な3次元マイクロ構造体を製作するのは容易ではない.また,マイクロの世界では部品の組み立てが容易でないため,すべての部品がMEMSプロセスだけで形成・組み立てできる複雑な3次元構造体のプロセスが必要不可欠である.厚膜フォトレジストによる鋳型と電鋳を用いた多層化MEMSプロセスにより複雑な3次元構造体であるマイクロ静電レンズアレイを製作することを提案した.静電レンズの電極の構造,寸法,印加電圧などについて,有限要素法ソフトウェアによるシミュレーションを行い,最適な寸法と形状を求めた.この結果をベースにし,ESD法の帯電粒子を静電レンズのように集束し,穴よりも小さいパターンを形成可能なステンシルマスクを設計,製作し,提案したプロセスにより所望の構造を作製できることを確認した.実現可能性を確認したものの,まだこのMEMSプロセスは不完全であるため,歩留まり100%になる製作条件を探す必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に構築したプロセスの製作条件を向上させ,静電レンズ機構を有するステンシルマスクを完成させる.このマイクロ静電レンズアレイとマイクロノズルを融合し,バイオ材料などが固定化できるナノ・マイクロパターニングシステムを提案・製作する.静電霧化されたナノパーティクルは非常に軽いため,ケースが必要であるものの真空などの特殊環境にする必要はない.このシステムを実現し,実験的にその原理の確認を行なう.また,このデバイスシステムを神経細胞ネットワークへ応用する.最初に細胞接着,器官形成,神経再生,血管新生などの機能があるタンパク質である,Lamininをナノ・マイクロパターニングする.次に神経細胞をLamininのパターンが形成された基板上で培養し,神経細胞ネットワークの形成・評価を行なう. 神経細胞ネットワークの実験データを生化学を専門とする研究者らへ公開し,異分野からの新たなニーズに応え,新領域を創成する.
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Research Products
(3 results)