2016 Fiscal Year Research-status Report
広視野レーザ走査方式によるLED用サファイア基板のナノレベル欠陥検出技術
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16K14144
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
新田 勇 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30159082)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 設計工学 / 機械機能要素 / トライボロジー / レーザ走査 |
Outline of Annual Research Achievements |
発光ダイオード(LED)の改善は着実に進められており,光を取り出す効率については,パターンド・サファイア基板(PPS)と呼ばれるマイクロテクスチャを形成する方法で改善できるようになった.しかし,基板の鏡面加工後,ナノサイズのスクラッチ痕発生場所ではマイクロテクスチャが不完全に形成され,発光効率が改善されず結果的に製品の歩留まりが低下することになっていた.そこで,ナノサイズのスクラッチ痕を迅速に計測する安価で簡便な技術の開発が望まれているが,現状では大型の検査装置を複数台用いざるを得ない状況である.本研究では,申請者がこれまで開発してきた広視野レーザ顕微鏡を工夫して用いることで,サファイア基板上のナノスクラッチを効率よく計測する方法を世界に先駆けて開発することを目的とする. これまでは,ダイヤモンドピンでシリコンウェハを引っ掻いたときに生じた傷を計測してきた.今回は,ELIONIX社製のナノインデンター(ENT-1100b)を使用して,サファイアウェハ上に既知の形状の傷を付けた.ナノインデンターの荷重範囲は0.098~980 mNで,荷重分解能は40 nNであり,変位については測定範囲0~100 μmで,変位分解能0.006 nmである.バーコビッチ圧子α=65.03°で圧痕を付けた.圧痕は点状圧痕と線状圧痕の2つを準備した.計測を行った結果,点状圧痕は幅1.51μm,深さが138nmの圧痕まで検出された.線状圧痕は幅0.53μm,深さが47nmの圧痕まで検出された.実際のナノサイズのスクラッチ痕は線状圧痕であると考えられるので,幅サブミクロン,深さ50nmまでのスクラッチ痕が検出できることが分かった.今後は,より小さなスクラッチ痕を検出できるように装置を改良していく計画である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は,(a)ナノレベル欠陥の製作,(b)広視野レーザ顕微鏡によるナノレベル欠陥の観察,(c)ピンホール径とデフォーカスの調整,(d)市販のレーザ顕微鏡との比較であった.ナノレベル欠陥の製作はナノインデンターを使用することで,シリコンウェハとサファイヤウェハの両方に既知の形状のものを作製できた.作製した欠陥形状は,AFMで確認している.広視野レーザ顕微鏡の観察においては,405nm,488nm,650nmの3種類の波長を用いた.波長が短い方がナノレベル欠陥の観察には適しているようである.また,このようなナノレベル欠陥の観察は,市販のレーザ顕微鏡を用いても行い,広視野レーザ顕微鏡との観察結果と比較している.ピンホール径を変えての観察は平成29年度に行う予定である. 以上,当初の予定通りの成果は達成できている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究では,予定通りの研究を行うことができたが,下記項目については十分に遂行するまでには至らなかった.そこで,平成29年度は,引き続き下記項目について実験を行う. ○ピンホール径とデフォーカスの調整がナノレベル欠陥の画像に及ぼす影響 市販のレーザ顕微鏡は,顕微鏡の調整の手間を省くために,比較的大きな径のピンホールを用いている.これに対して,広視野レーザ顕微鏡では比較的小さな径のピンホールを用いているが,さらに小さな径のピンホールの効果を調べる.また,観察表面のデフォーカス具合がナノレベル欠陥の検出感度を左右する可能性があるので,ピンホールの大きさと絡めてこの点について調べる. 最後に,得られた知見や計測ソフトウェアなどの研究成果を,分かり易い形となるようにまとめる.
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Causes of Carryover |
当該年度中に納品等が完了しているが,支払いが次年度となったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「次年度使用額」となった405,390円は,当該年度中に学会参加登録料およびパソコン購入に使用し,すでに支払いが確定している.
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