2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14149
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柳沢 雅広 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 客員上級研究員(研究院客員教授) (20421224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表面・界面 / プラズモニクス / 表面増強ラマン散乱 / トライボロジー / 接触 / 埋もれた界面 / 分光分析 / 炭素材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トライボロジー現象(摩擦・摩耗・潤滑)を摺動時の"機械的な挙動と化学構造の変化を同時にその場観察"することにより、"接触界面から界面直下の領域の応力と物質の動的挙動をナノスケールで明らかにする"ことを目的とする。新手法はラマン散乱光を数桁増強する球面の透明摺動子を試料表面で摺動させ摺動子背面から励起光を接触点に照射し、界面近傍から散乱する増強ラマン光により界面の化学的構造および温度の同時測定を行うとともに、摩擦力、荷重、および摺動子跳躍などの機械的挙動を精密に同時測定する。空間分解能は面内方向50nm,深さ方向0.1nmで測定が可能であり、1ms(1KHz)までの高速測定が可能である。例えば摺動に伴うダイヤモンド状炭素や各種潤滑油の化学構造と機械的特性の関係を動的かつナノスケールで明らかにする。今年度は、10N以上での大荷重摺動装置とラマン分光機と組み合わせて、機械物性と化学構造の同時測定装置を開発した。次にSiとサファイヤ摺動子を摺動させラマンスペクトルと摩擦力、荷重、摩擦係数の同時測定を行った。その結果、摩擦の低い状態でもSiから700℃を超えるフラッシュ温度が観察され、そこではSi単結晶が非晶質に転移していることがわかった。一方、サファイヤ摺動子に結晶変態はなくフラッシュ温度も観察されなかった。この結果は、フラッシュ温度は結合が切れることにより生じることが推測できる。なお、本実験は100msの現象をとらえており、フラッシュ温度は高速の現象であることがわかった。また温度は摩擦力とは無関係であり摩擦熱では説明できない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回開発した、大荷重摺動装置とラマン分光装置を組み合わせた装置は、Siからのフラッシュ温度が観察された等で極めて有効な装置であることを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は開発した装置をさらに活用し、潤滑状態でのその場観察、接触界面の測定など摩擦、摩耗状態での化学構造変化を精密観察しトライボロジーのメカニズムの解明に挑戦する。
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