2016 Fiscal Year Research-status Report
量子乱流場の三次元渦構造の可視化とラグランジュ速度の計測
Project/Area Number |
16K14158
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
辻 義之 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00252255)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 流体工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体ヘリウムは、温度2.17Kにおいて粘性の極めて小さな超流動状態に転移する。超流動場では量子渦が形成され、それらが複雑に絡み合う量子乱流状態となる。量子渦は単一の循環値を持つ渦糸であり、その三次元的な運動を把握することが必要とされる。本研究では超流動場の三次元可視化システムを構築し、量子乱流場に播種した微細粒子のラグランジュ速度の計測をおこなう。 現在、微粒子を画像処理により検出するアルゴリズムを完成させ、二次元でのラグランジュ計測が可能となった。粒子径により、ラグランジュ統計量に差異が現れることを明らかにした。粒子径の検出には、ラべリング手法を利用した。隣り合う領域で連結する部分を検出して、個別の粒子と認識してラベルを張り付ける。レーザーからの反射により、粒子表面では散乱による輝度値の大小が存在する。より輝度値の大きな粒子を選別して、その軌道を追跡した。散乱光の広がりから見積もられる粒子径と実際の粒子径を算出するには、いくつかの問題があることが分かった。熱対向流下においては、速度分布は粒子径により大きな影響を受けることがわかった。小さな粒子は、流れに追随して二峰性の速度分布を示すが、大きな粒子ではガウス分布に近い分布となる。より強い乱流状態では、粒子径の影響は小さくなる。また、ラグランジュ加速度の分布は、粒子径の影響が顕著には認められない。この傾向は、古典乱流中における微粒子の加速度統計と類似している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
画像処理により粒子径を算出することは、光学系、撮像系との関連のみならず、粒子からの散乱光をどのように取り扱うのかが重要な問題であることがわかった。この知見を踏まえ、三次元における粒子軌道の解析をすすめていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
三次元撮像系を構築し、粒子径の算出とそのラグランジュ軌道を計測する。粒子は直径の分かっている粒子を用い、反射光の影響を定量的に見積もる。粒子径の算出には静止流体中での沈降速度を計測することによって見積もり、その結果を画像処理と比較する。粒子数増やさず、粒子軌道を確実に追尾できるアルゴリズムを構築する。 これまで使用してきたマクロレンズは、約6mm四方の領域を撮像できる。このレンズを用いた3次元計測では、被写界深度を3次元可視化領域と同等になるように光学系を改良する。ラグランジュ計測では、時間空間分解能が十分に確保される必要があるため、空間分解能を向上させることに重点を置く。 計測システムは、4方からカメラを設置できるようにする。レーザーを下方から入射させることにより、カメラ光軸への直接の入射を排除する。また、散乱光の波長を選別するためにバンドハスフィルタを使用する。微粒子には、レーザーからの発光を十分に確保できる蛍光粒子を用いる予定である。 三次元空間中の微粒子の軌道追跡には、二次元空間で開発されたプログラムを改良する予定である。粒子選別が格段に難しくなることが予想されるため、既存のアルゴリズムを参考にすることで効率的な画像処理を実施する。 ラグランジュ速度並びに加速度の算出を行い、その統計性を議論する。特に古典乱流の実験や数値計算で明らかにされている既存の結果と比較を行い、実験精度の検証をおこなう。
|