2017 Fiscal Year Research-status Report
植物における水・物質輸送機構の機械的刺激に対する応答特性の解明
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16K14163
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
望月 修 東洋大学, 理工学部, 教授 (50157830)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サップフロー / 流量計測 / 蒸散 / 機械的刺激 / 応答特性 / 流れの可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度以降に行う項目のうち、植物における物質輸送に関連して、機械的刺激である穴を開けた葉っぱの葉脈における吸水機構を明らかにするために、実際の葉っぱを用いた実験と葉っぱを模して作った模型を用いたモデル実験を行った。葉っぱの葉脈構造と吸水の関係を実際の葉っぱを用いて、葉脈構造と吸水の関係を調べた。これらにおいて正常な吸水状態と、葉っぱに穴を開け葉脈の一部を欠落させた状況での吸水の観察を行い、正常状態との比較を行った。この結果、羽状葉脈と掌状葉脈ではどこか一本の葉脈が繋がっていさえすれば穴の開いた後方部分にも水が行き渡ることがわかった。平行葉脈や二又葉脈の場合、肉眼ではなかなか確認しづらいが、実は平行に走る葉脈をつなぐ横の細い葉脈があることがわかった。このため、穴が開いても、横の線を使って穴の後方に水を行き渡らせられることがわかった。したがって、葉っぱ全体がスポンジ構造のようなもので、葉柄近傍以外の葉っぱのどこに穴が開こうが葉脈のパイプラインとしての連絡網が分断されたのではなく、スポンジ構造の一部が欠落したに過ぎないのである。 気孔からの蒸散による分子間力が植物内の水を引っ張り上げる力であるということが一般的には言われている。これを確かめるために、薄いアクリル性の板を薄い隙間を開けて二枚張り合わせ、一枚には機構を模した小さな穴をいくつか開けた。この穴以外は吸水部分を除いて塞いである。その小さな穴の総開口面積は実際のナンテンの葉っぱの気孔の総開口面積と同じに設定した。隙間に水を入れた状態で、この葉っぱモデルを水面に立てても水を吸い上げることはできなかった。葉っぱモデルの開口部分を上にして水面に浮かべると、蒸発した分で葉っぱモデルの中に水を引っ張り入れられることがわかった。つまり、ほんのわずかな水位差が存在するだけで、蒸発による表面張力だけでは不十分であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物の導管内の流れを理解するために、葉っぱでの吸水を中心に調べてきた。つまり、どのくらいの入力があるのかを押さえておかないと、計測してもそれが正しいのかどうかが判別できないからである。したがって、葉っぱ内の流れの可視化を行いどのくらいの流量が1枚の葉っぱで担っているのかを明らかにした。現存のサッポフローメータは加熱式であるので、植物に対して熱的刺激が加わることになる。この時に流量がどのように変化するのかも必要な情報である。葉っぱの吸水流量を知ることは、熱的刺激のない状態での流量とみなすことができるので、サッポフローメータを用いたときの基準流量として評価できる。ただし、これは葉っぱによる吸水だけであるので、実際には根からの押上も作用していると考えられる。この点の分離については次年度行うことにする。 学会での口頭発表を行い良い評価を得ている。今年度中に論文として投稿準備中であるので、ほぼ計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル実験の継続とそれを確認するための数値シミュレーションを行う予定である。また、実際の葉っぱでは吸水できるのに、モデル実験では吸水能力が足りない原因を明らかにする予定である。最終年度であるので、成果のまとめを早めに行う予定である。
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Causes of Carryover |
最終年度の学会発表のために旅費を使用していなかったことと、人件費としてのアルバイトを今年度は必要としなかったためである。最終年度の実験項目が多いためにそちらに回すためである。
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