2017 Fiscal Year Research-status Report
FPGAによる温度・速度の完全多点計測法の実用化と乱流輸送に及ぼす成層効果の解明
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16K14164
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
大庭 勝久 沼津工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (40321442)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 流体工学 / 熱流体計測 / 抵抗線温度計 / FPGA / 温度成層流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、同時並列処理が可能な組込みデバイスの一種であるFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて二線式温度流速計をデジタル化し、温度成層流中における高精度な多点計測を実現することである。 本研究で使用するFPGAモジュールの演算は固定小数点方式に限定される。また、双一次変換により設計される補償系の係数の値はサンプリング周波数にも依存する。そのため、補償精度を確保するためには適切な桁指定(スケーリング)が必要となる。そこで、スケーリング量が補償系の伝達関数に及ぼす影響を調べるアルゴリズムを検討し、LabVIEWで自動的に評価するプログラムを開発した。 抵抗線温度計の周波数特性は、計測環境に応じて変化する動特性を有しているため、本研究では、補償演算毎に補償係数を更新するシステムを構築し、周波数補償系の特性を追従させる動的補償系を開発した。評価実験の結果、最大誤差1.0%以内で補償演算が実現できることを確認し、動的補償系を実現した。 熱線流速計は気流温度一定を前提とするため、温度成層流への適用には温度変化に対する流速値の補償が必要となる。本年度は、熱伝導率や動粘性係数等の物性値の温度依存性をモデル化し、温度補償アルゴリズムを構築した。モデル化の際に無次元温度の高次関数として表現することで、流速値の最大誤差が0.1%以内に抑制され、計測可能な気流の温度範囲も拡大された。 二線式温度流速計をデジタル化するためには、3種の補償系をFPGA上で統合した相互補償系を実現する必要がある。第一段階として、周波数補償系と空間分解能を改善するための遅延補償系の統合と評価試験を行った。周波数補償により、抵抗線温度計による一次遅れの影響を受けた利得と位相差が適切に補償されると同時に、線間距離に相当する遅延処理が誤差0.1%以内で実現されていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抵抗線温度計の周波数補償系は、双一次変換法を用いて設計される。そして、双一次変換により算出される補償系の特性はサンプリング周波数に依存する。所望の伝達関数を得るためには特性を決定付ける6つの補償係数に対して、概ね小数点以下8桁程度まで正確に演算を行う必要があることが、これまでの研究により明らかになっている。 一方、本研究で使用するFPGAモジュール(型番:PXI-7972R、FPGAチップ:Kintex-7)の演算は、固定小数点方式に限定される。したがって、補償系の精度を確保するためには、固定小数点数の整数部および小数部の桁数を適切に指定(スケーリング)する必要がある。そのため、サンプリング周波数の影響を考慮した上で、スケーリング量が伝達関数に及ぼす影響を吟味する必要性が生じた。本年度は、適切なスケーリング量を自動的に評価する知見を蓄積したことで、今後の研究・開発が効率化する見込みである。 本年度は、相互補償系の構築として周波数補償系と遅延補償系の統合を行った。その際、2つの要素を単純にプログラム内で連結するだけでは正常に機能せず、サンプリング周波数等のパラメータ設定のタイミングを考慮して設計する必要があった。補償系の演算は、PXIシステムに内蔵されているFPGAモジュールで行われている。それに対して、データの収録・管理はホストPCで行われており、FPGAモジュールとホストPC間で膨大な量のデータ転送が必要となる。本研究で採用したFIFO(First-In First-Out)と呼ばれる通信方式により大容量通信を行い、同時に補償演算が実行可能か検証も行った。 これまでにFPGAを流体計測に応用した事例はなく、想定した以上の工程を要することとなり、当初の計画より遅れる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.相互補償系の開発 周波数補償系と遅延補償系の統合に加えて、温度補償系も統合し二線式温度流速計のための相互補償系を開発する。その後、デジタル温度流速計としての性能評価を行う。 2.輸送現象に及ぼす成層効果の実験 直線上の温度分布を有する成層流(温度勾配:数十~1500K/m)中において、温度・速度変動ならびに相関量計測を行い、乱流輸送に及ぼす成層効果について実験的に解析を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は、計測システムの機能拡張のためのPXIリモート制御用デバイスの購入と、計測センサ―を製作するための金属細線の購入が主な使途であった。学会発表が予定よりも少なくなったため、全体としては予算が残る結果となった。 今後は、デジタル温度流速計の性能評価実験を進め、状況に応じて、FPGAの機能を拡張するためのデータ収録ボードの購入に充てる計画である。
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