2016 Fiscal Year Research-status Report
減圧環境下における微小液滴の加熱面衝突時局所熱伝達特性に関する研究
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16K14166
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
畠中 龍太 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (80725333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田川 義之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70700011)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ライデンフロスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は、減圧環境下において、噴霧冷却に用いられる100ミクロン級の液滴を加熱面に衝突させた場合の液滴挙動と壁面からの除熱率を実験的に評価することであるが、まずは直径2mm程度の液滴を用いて実験装置構築および実験手法の確立を進めた。減圧環境下の場合、溶存ガスによる気泡発生や圧力低下あるいは温度上昇に伴う沸騰開始が、安定した実験データ取得の大きな妨げになっていたが、実験装置・手順の改良によって安定してデータ取得をできるようになった。 構築した実験装置を用いて、環境圧力(0.5~100kPa)と壁面温度(常温~350℃)を一定に維持しながら単一液滴を滴下して衝突させて高速度カメラで撮影し、液滴挙動の相図を作成した(R.Hatakenaka & Y. Tagawa, 69th APS/DFD)。現時点で得られている知見は、1)圧力低下に伴いライデンフロスト現象による跳ね返り(Bounce)の発生温度が低下すること、2)さらに低圧(10kPa以下程度)ではBouce(非接触)ではない特異な挙動(液滴-壁面間で局所的な接触が生じて大変形/一部飛散しながら跳ね返る)を示すこと、の2点である。1点目は、圧力低下に伴って飽和温度が低下するため、同じ壁面過熱度を得るための壁面温度が低下することになることで説明可能である。2点目は、定性的には、環境圧力が低いこと、および液滴-壁面間で発生した蒸気も周囲に流出してしまうことにより、液滴-壁面間の空気バネ効果が弱まることが原因と考えられる。 特に2点目は公知の論文では未だ議論されていない現象であるため、定量的な議論を深めるために実験の高精度化と追加データ収集を進めている。また、次のステップとして、①100ミクロン級液滴の滴下装置、②高密度/高応答熱電対アレイ、の2つを同実験装置に組み込む構想であり、そのための要素試作を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績概要欄記載の通り、減圧環境下で液滴衝突実験を行うための実験装置・手順は概ね構築できており、新しい学術的知見を得られつつあり、定量的な議論を行うために詳細且つ網羅的ななデータ収集に移行している点では、当初計画通りに進展している。 当初想定よりも遅れているのは、100ミクロン級液滴の滴下装置の試作および高密度/高応答熱電対アレイの試作に関する部分である。前者は、空圧方式とピエゾ方式を調査/試作を行っているが、シール性や取り扱いの観点で課題を抱えている。後者は、孔開き銅板にコンスタンタン線を挿入して表面にスパッタリングにより薄膜の温接点を形成する手法をを試行しているが、線と孔内壁の隙間を厚膜メッキで埋める工程でメッキ液の濡れ性に関する課題を抱えている。しかしながら、本格的な導入の前に要素試作を通じて技術課題が明らかにすることができ、解決策の検討/試行を進められていることから、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度において減圧環境下で液滴実験を行うための実験ノウハウを得ることができ、実験装置を改良していく際の注意点が明らかになった。平成29年度は、まずは構築した実験装置を用いて実験データの収集を進め、環境圧力(0.5~100kPa)と壁面温度をパラメータとした液滴挙動の相図を完成させて論文執筆/投稿を行う。それと並行して、100ミクロン級液滴滴下装置と高密度/高応答熱電対アレイに関しては、引き続き改良・試作・テストを継続し、試作成功した時点で実験装置に組み込む。 また本研究に資する国際共同研究を行う.具体的には,Darmstat大学(ドイツ)のTropea先生,Nanyang工科大学(シンガポール)のTran先生との共同研究を開始する.東京農工大学大学院生1名(藤田裕太)の協力を得る.
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Causes of Carryover |
平成28年度中に要素レベルの試作/評価を行った上で熱電対アレイや微小液滴生成装置の本格的な試作に着手する計画であったが、試作段階でいくつかの技術課題に直面し、解決に時間を要したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した予算は、各種技術課題を解決した後に、熱電対アレイや微小液滴生成装置の製作費・実験必要資材の購入費として使用する予定である。また、次年度に開始予定の国際共同研究(Darmstat大学(ドイツ)Tropea先生,Nanyang工科大学(シンガ ポール)のTran先生)のための旅費に使用する。
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