2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14218
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
金澤 誠司 大分大学, 工学部, 教授 (70224574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正 大分大学, 工学部, 名誉教授 (30100936)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | OHラジカル / ゲルシート / 大気圧放電プラズマ / 化学プローブ法 / ウェアラブル / 蛍光法 / テレフタル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性酸素の一つとして注目されるヒドロキシラジカル(OHラジカル)を検出するために検出試薬を織り込んだゲル状物質からなる機能性ヒドロゲルを作製した。機能性ヒドロゲルは、市販のアガロースの粉末をベース材料とし、それを寒天状にする際に、テレフタル酸を含む溶液を用いることで作製可能である。ゾル状のテレフタル酸を含むアガロース溶液は、電子レンジで沸騰するまで加熱する。その後シャーレに流し込み、固体化したら取り出す。ゲルシートとしての厚さはシャーレに流し込む段階で1~3mm程度に調整した。作製したヒドロゲルシートは、接着剤なしで貼り付け可能であり、人体にも貼り付けできるためウェアラブルなシートとなっている。使用する観点から、ゲルの強度や柔軟性についても評価した。結果として、これまでにないOHラジカル検出シートが完成した。 作製したヒドロゲルシートの応用として、放電プラズマの反応場において活用することを提案した。平行平板電極の空間にガラス板に貼り付けたヒドロゲルシートを挿入して、バリア放電によるOHラジカルの発生と分布状態を観測した。バリア放電の特徴であるフィラメント状のマイクロ放電に対応してOHラジカルが生成していることを可視化した。ゲルに含ませる水をテレフタル酸溶液の他に色素を入れてみることも実施した。着色したフィルムをバリア放電のギャップ間に挿入し、放電にさらすことにより脱色反応とOHラジカルの挙動を同時に観測することに成功した。これは放電プラズマ処理にラジカルが如何に寄与しているかを調査する手法として、今後さらに研究が展開できることを示唆するものである。 本研究で開発した機能性ヒドロゲルシートに関しては、特許出願(特願2016-173928)を行った。また、東京ビッグサイトで開催された2016NEW環境展にも出品した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学プローブ法の基本であった試薬を溶解させた溶液を用いる必要性がゲルにより解消した。さらにこれをシート状にすることで、適用可能な範囲が液中だけでなく,気相や気液界面に広がった。 現在までのところ、大気圧放電プラズマとして代表的なプラズマジェット、バリア放電、パルスストリーマコロナ放電に作製したOHラジカル検出ヒドロゲルシートを適用し、それぞれの放電プラズマ発生形式に固有なOHラジカルの分布状況が可視化できることを確認した。 さらにヒドロゲルシート作製のアガロースの濃度についてゲル強度との関係を調査し、最適値が1%程度であることがわかった。さらにOHラジカルのゲル内での流動性についても大気圧プラズマジェットをゲルシート上で走査することによりパターン化されたラジカル照射領域を出現させて検証を行い、トラップされたOHラジカルが拡散することはないことがわかった。保持できる時間特性については、通常の測定に要する時間程度では問題ないこと、保持時間を長くするには冷蔵保存することで数日は状態を保てることがわかった。 また、厚さ1mmのシートを反応容器の内壁に張り付けて、オゾンと水蒸気によるOHラジカル生成の新たな反応経路を確認することができた。これは放電由来によるOHラジカルの生成とは全く別の反応経路を示唆するものであり、長寿命なオゾンによりOHラジカルが生成できることは極めて重要な意義をもつものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したOHラジカル検出ヒドロゲルシートは,各種プラズマでの使用が可能で、OHラジカルの分布が可視化できるところまで研究は到達したが、OHラジカルの絶対量を明らかにできていない。液体での検出ではOHラジカルをすでにトラップした標準試薬である2-ヒドロキシテレフタル酸を用いて検量線を作製し、絶対量への換算が行える。しかし、ゲルは3次元網目構造からなり、その内部に溶液を保持する構造では、光の乱反射や透過率の低下による影響で、検量線の作製が難しい。この問題を克服するには、現在作製されている厚さ1mmのシートでは検出される蛍光への影響が大きいため、さらに薄くしたシートが必要である。今後、定量化を行うには、この課題を解決する必要がある。 また、化学プローブ法だけでなく、他の手法として電子スピン共鳴法を使用してクロスチェックも行う計画である。これによりラジカル照射量の定量化を目指す。さらに検出限界を明らかにし,放電プラズマの照射方法や時間との関係について開発したOHラジカル検出ヒドロゲルシートの性能を明らかにする。 シートの取扱易さ、耐久性、柔軟性について調査し、ウェアラブルなセンサのレベルまでになっているか評価する。 研究初年度において各種プラズマで特徴あるOHラジカル分布が観測された。通常は、放電プラズマはリアクタごとで特性が異なり、例え同じ放電形式でも研究者により処理効率等が変わる。このことをラジカル計測の視点から評価する。リアクタと放電領域の関係、ガス流量と滞在時間、反応性ガスの存在の有無などによる影響をリアクタ内部でのOHラジカル分布を明らかにすることで検討する。
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Causes of Carryover |
外国旅費として当初使用する計画であった国際会議への参加が、在籍する大学の改組による諸課題を所掌する教務委員長として事務処理するための時期と重なり見送ることにした。そのため、計上していた予算が消化されず残ったため次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した額は、次年度予定していた金額と合わせて実験を遂行するための消耗品の購入や旅費に充てる。特に、研究最終年度となるため研究成果の報告をしっかりと行う予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Patent(Industrial Property Rights)] ヒドロキシラジカル検出用組成物及びデバイス、並びにそれを用いたヒドロキシラジカルの検出方法2016
Inventor(s)
金澤誠司,市來龍大,東山賢一,平山裕二,芳原和希,冨永健太
Industrial Property Rights Holder
金澤誠司,市來龍大,東山賢一,平山裕二,芳原和希,冨永健太
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
特願2016-173928
Filing Date
2016-09-06